中等症左横隔膜ヘルニアに対する胎児手術の無作為化試験
Randomized Trial of Fetal Surgery for Moderate Left Diaphragmatic Hernia
J.A. Deprest and Others
胎児鏡下気管閉塞術(FETO)は,孤発性先天性左横隔膜ヘルニアにより重度の肺低形成をきたした胎児の出生後の生存率向上と関連しているが,中等症の先天性左横隔膜ヘルニアを有する児への効果を示すデータは不足している.
FETO およびその他の出生前手術の経験を有する施設で行った多施設共同非盲検試験で,中等症の孤発性先天性左横隔膜ヘルニアを有する児の単胎妊娠例を,妊娠 30~32 週の時点で FETO を行う群と待期的治療を行う群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.いずれの治療後も標準化された出生後治療を行った.主要転帰は,新生児集中治療室(NICU)生存退室と,生後 6 ヵ月時点での酸素投与なしでの生存とした.
196 例を対象とした intention-to-treat 解析では,FETO 群の児 98 例中 62 例(63%)と待期的治療群の児 98 例中 49 例(50%)が生存退室した(相対リスク 1.27,95%信頼区間 [CI] 0.99~1.63,両側 P=0.06).生後 6 ヵ月の時点で,FETO 群の児 98 例中 53 例(54%)と待期的治療群の児 98 例中 43 例(44%)が酸素投与なしで生存していた(相対リスク 1.23,95% CI 0.93~1.65).早期前期破水の発生率は FETO 群の女性のほうが待期的治療群の女性よりも高く(44% 対 12%,相対リスク 3.79,95% CI 2.13~6.91),早産の発生率も同様であったが(64% 対 22%,相対リスク 2.86,95% CI 1.94~4.34),FETO は,その他の重篤な母体合併症とは関連しなかった.明白な原因のない自然胎児死亡が 2 例(各群 1 例),バルーン抜去に関連した新生児死亡が 1 例あった.
中等症先天性左横隔膜ヘルニアを有する胎児を対象としたこの試験では,在胎 30~32 週の時点で FETO を行った場合,生存退室と 6 ヵ月時点での酸素投与の必要性に関して,待期的治療と比較して有意な利益は認められなかった.FETO により,早期前期破水と早産のリスクが上昇した.(欧州委員会ほかから研究助成を受けた.TOTAL 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00763737)