October 21, 2021 Vol. 385 No. 17
腹膜透析における AQP1 プロモーター変異,水輸送,転帰
AQP1 Promoter Variant, Water Transport, and Outcomes in Peritoneal Dialysis
J. Morelle and Others
腹膜透析治療中の腎不全患者では,限外濾過量の差が,処方や転帰に影響を及ぼしている.典型的な水チャネルであるアクアポリン 1 をコードする遺伝子 AQP1 の変異が,そのばらつきに寄与している可能性がある.
AQP1 の変異の,腹膜の限外濾過量との関連,および死亡または技術的失敗(すなわち血液透析への移行)の複合リスクとの関連を明らかにするため,7 つのコホート集団から腹膜透析治療中の患者 1,851 例の臨床データと遺伝子データを収集した.AQP1 の変異の特徴を解析し,その影響を軽減する戦略を検討するため,細胞,マウスモデル,ヒト検体で研究を行った.
頻度の高い AQP1 プロモーター変異である rs2075574 は,腹膜の限外濾過量と関連していた.rs2075574 が TT 型の人(患者の 10~16%)は,CC 型の人(患者の 35~47%)よりも,正味の限外濾過量の平均(±SD)が発見段階においても低く(506±237 mL 対 626±283 mL,P=0.007),検証段階においても低かった(368±603 mL 対 563±641 mL,P=0.003).平均追跡期間 944 日の時点で,898 例中 139 例(15%)が死亡し,280 例(31%)が血液透析に移行していた.TT 型の人は CC 型の人よりも,死亡または技術的失敗の複合リスクが高く(補正ハザード比 1.70,95%信頼区間 [CI] 1.24~2.33,P=0.001),全死因死亡のリスクも高かった(24% 対 15%,P=0.03).機序の研究では,rs2075574 リスク変異は,AQP1 プロモーター活性の低下,アクアポリン 1 発現の減少,グルコースによる浸透圧性水輸送の減少に関連していた.リスク変異の影響は,膠質浸透圧薬の使用により軽減した.
AQP1 の頻度の高い変異は,腹膜透析治療中の患者の限外濾過量の減少と,死亡または技術的失敗のリスクの増加に関連していた.(スイス国立科学財団ほかから研究助成を受けた.)