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November 18, 2021 Vol. 385 No. 21

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ハーラー症候群に対する造血幹・前駆細胞の遺伝子治療
Hematopoietic Stem- and Progenitor-Cell Gene Therapy for Hurler Syndrome

B. Gentner and Others

背景

同種造血幹細胞移植は,ハーラー症候群(ムコ多糖症 I 型ハーラーバリアント [MPSIH])の標準治療である.しかし,この治療法では部分的な治療にしかならず,合併症を伴う.

方 法

MPSIH 患児 8 例を対象とした試験を実施中である.登録の時点で,患児には適切な同種ドナーがおらず,発達指数(DQ)または知能指数(IQ)が 70 を超えていた(すなわち,中等度または重度の認知機能障害を有する例はいなかった).患児は,骨髄破壊的前処置の後,α-L-イズロニダーゼ(IDUA)をコードするレンチウイルスベクターを用いて ex vivo で遺伝子導入した自家造血幹・前駆細胞(HSPC)の投与を受けた.主要エンドポイントは,安全性と,生理的範囲を超える血中 IDUA 活性の正常化とした.副次的エンドポイントおよび探索的エンドポイントとして,ライソゾーム蓄積物質のクリアランス,骨格の発達,神経生理学的発達を評価した.試験の予定期間は 5 年である.

結 果

中間結果を報告する.HSPC 遺伝子治療の時点での患児の平均(±SD)年齢は 1.9±0.5 歳であった.追跡期間中央値 2.10 年の時点で,この処置の安全性プロファイルは,自家造血幹細胞移植の既知の安全性プロファイルと同様であった.全例で,遺伝子修正細胞の迅速かつ持続的な生着が示され,1 ヵ月以内に生理的範囲を超える血中 IDUA 活性が得られ,直近の追跡調査時まで持続していた.グリコサミノグリカン(GAG)の尿中排泄は急激に減少し,12 ヵ月の時点で,評価しえた 5 例中 4 例で正常値に達していた.それまでは検出不可能であった髄液中の IDUA 活性は,遺伝子治療後に検出可能となり,GAG の局所クリアランスと関連していた.患児には,安定した認知機能,運動機能の継続的な発達に相当する安定した運動技能が認められ,脳および脊椎の MRI 所見は改善または変化なしで,関節拘縮の減少,世界保健機関の成長曲線と一致する正常な成長が認められた.

結 論

MPSIH 患児に HSPC 遺伝子治療を行った結果,末梢組織と中枢神経系における代謝が広範囲で正常化した.(テレソン財団ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03488394,EudraCT 登録番号 2017-002430-23)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 385 : 1929 - 40. )