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November 25, 2021 Vol. 385 No. 22

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高齢者の大腿骨手術における脊椎麻酔と全身麻酔との比較
Spinal Anesthesia or General Anesthesia for Hip Surgery in Older Adults

M.D. Neuman and Others

背景

大腿骨近位部骨折手術を受ける高齢者の術後の歩行能力に対して,脊椎麻酔が及ぼす影響と全身麻酔が及ぼす影響とで十分な比較検討は行われていない.

方 法

米国およびカナダの 46 病院で,大腿骨近位部骨折手術を受ける,それまで歩行可能であった 50 歳以上の患者を対象に,脊椎麻酔と全身麻酔とを比較評価する実用的無作為化優越性試験を行った.患者を,脊椎麻酔群と全身麻酔群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要転帰は,無作為化後 60 日の時点での死亡および約 10 フィート(3 m)の独歩・歩行器歩行・杖歩行不可能の複合とした.副次的転帰は,60 日以内の死亡,せん妄,退院までの期間,60 日の時点での歩行などとした.

結 果

1,600 例が登録され,795 例が脊椎麻酔群,805 例が全身麻酔群に割り付けられた.平均年齢は 78 歳で,67.0%が女性であった.脊椎麻酔群の 666 例(83.8%)と,全身麻酔群の 769 例(95.5%)が割り付けられた麻酔を受けた.データを入手しえた修正 intention-to-treat 集団では,複合主要転帰は,脊椎麻酔群の 712 例中 132 例(18.5%)と全身麻酔群の 733 例中 132 例(18.0%)に発生した(相対リスク 1.03,95%信頼区間 [CI] 0.84~1.27,P=0.83).60 日の時点での独歩不能はそれぞれ 684 例中 104 例(15.2%)と 702 例中 101 例(14.4%)で報告され(相対リスク 1.06,95% CI 0.82~1.36),60 日以内の死亡はそれぞれ 768 例中 30 例(3.9%)と 784 例中 32 例(4.1%)に発生した(相対リスク 0.97,95% CI 0.59~1.57).せん妄は,脊椎麻酔群では 633 例中 130 例(20.5%),全身麻酔群では 629 例中 124 例(19.7%)に発生した(相対リスク 1.04,95% CI 0.84~1.30).

結 論

高齢者の大腿骨近位部骨折手術において,脊椎麻酔は,60 日の時点での生存と歩行回復に関して,全身麻酔に対する優越性を示さなかった.術後せん妄の発生率は,2 種類の麻酔で同程度であった.(患者中心アウトカム研究所から研究助成を受けた.REGAIN 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02507505)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 385 : 2025 - 35. )