60 歳以上に対する BNT162b2 メッセンジャー RNA ワクチン（ファイザー社–ビオンテック社）の 3 回目の接種（ブースター接種）から有望な初期結果が得られた後，イスラエルにおけるブースター接種キャンペーンは，5 ヵ月以上前に 2 回目の接種を受けている，より年齢の低い層へと徐々に拡大された．

イスラエル保健省のデータベースから，2021 年 7 月 30 日～10 月 10 日の期間に，5 ヵ月以上前に BNT162b2 ワクチンの 2 回の接種を受けており，16 歳以上であった 4,696,865 例のデータを抽出した．主要解析では，12 日以上前にブースター接種を受けた人（ブースター群）における，検査で確認された新型コロナウイルス感染症（Covid-19），重症 Covid-19，死亡の発生率を，ブースター接種を受けなかった人（非ブースター群）と比較した．副次的解析では，ブースター群におけるこれらの発生率を，3～7 日前にブースター接種を受けた人（ブースター接種後早期群）と比較した．交絡の可能性のある因子で補正後，ポアソン回帰モデルを用いて率比を推定した．

ブースター群における検査で確認された感染の発生率は，非ブースター群と比較して約 10 分の 1 であり（5 つの年齢層で 9.0 分の 1～17.2 分の 1 の範囲），ブースター接種後早期群と比較して 4.9 分の 1～10.8 分の 1 であった．補正後の発生率の差は，100,000 人日あたり，主要解析で 57.0～89.5，副次的解析で 34.4～38.3 であった．ブースター群における重症 Covid-19 の発生率は，60 歳以上では，主要解析で 17.9 分の 1（95%信頼区間 [CI] 15.1 分の 1～21.2 分の 1），副次的解析で 6.5 分の 1（95% CI 5.1 分の 1～8.2 分の 1）であり，40～59 歳では，主要解析で 21.7 分の 1（95% CI 10.6 分の 1～44.2 分の 1），副次的解析で 3.7 分の 1（95% CI 1.3 分の 1～10.2 分の 1）であった．補正後の発生率の差は，60 歳以上では，100,000 人日あたり，主要解析で 5.4，副次的解析で 1.9，40～59 歳では，100,000 人日あたり，主要解析で 0.6，副次的解析で 0.1 であった．ブースター群における死亡率は，60 歳以上では，主要解析で 14.7 分の 1（95% CI 10.0 分の 1～21.4 分の 1），副次的解析で 4.9 分の 1（95% CI 3.1 分の 1～7.9 分の 1）であった．補正後の死亡率の差は，100,000 人日あたり，主要解析で 2.1，副次的解析で 0.8 であった．

検討した成人の全年齢層にわたり，検査で確認された Covid-19 の発生率と重症 Covid-19 の発生率は，BNT162b2 ワクチンのブースター接種を受けた参加者のほうが，受けなかった参加者よりも大幅に低かった．