メディケア・メディケイド・イノベーションセンターは，2018 年 10 月に，病院を対象とした，ケア改善のためのメディケア包括支払制度アドバンスト（BPCI-A）プログラムを開始した．このプログラムが医療の利用とメディケア支払額に及ぼす影響に関する情報が必要である．

2017 年 1 月～2019 年 9 月に退院日の記録がある患者を対象に，メディケア請求データを用いて修正分割回帰分析を行い，BPCI-A 参加病院と，BPCI-A プログラムに参加しなかった病院（非参加病院），介入期間終了後の 2020 年 1 月に BPCI-A プログラムに参加した病院（期間終了後参加病院）の 2 つの対照群との差を評価した．主要転帰は，90 日間のエピソード 1 件あたりのメディケア支払額の四半期の動向における変化量の差と，退院後 90 日以内に再入院した患者の割合とした．副次的転帰は，死亡率，診療数，ケースミックスとした．

BPCI-A 参加病院 826 施設を，非参加病院 2,016 施設，期間終了後参加病院 334 施設と比較した．BPCI-A 参加病院では，90 日間のエピソード 1 件あたりのメディケア支払平均額はベースラインで 27,315 ドルであり，ベースラインと比較した介入期の四半期の動向における変化量は －78 ドルであった．非参加病院では，90 日間のエピソード 1 件あたりのメディケア支払平均額はベースラインで 25,994 ドルであり，ベースラインと比較した四半期の動向における変化量は －26 ドルであった（非参加病院と BPCI-A 参加病院との差，四半期あたり 52 ドル [95%信頼区間 {CI} 34～70]，P＜0.001，ベースラインの支払額の 0.2%）．期間終了後参加病院では，90 日間のエピソード 1 件あたりのメディケア支払平均額はベースラインで 26,807 ドルであり，ベースラインと比較した四半期の動向における変化量は 4 ドルであった（期間終了後参加病院と BPCI-A 参加病院との差，四半期あたり 82 ドル [95% CI 41～122]，P＜0.001，ベースラインの支払額の 0.3%）．再入院，死亡率，診療数，ケースミックスに関しては，変化量に意味のある差は認められなかった．

BPCI-A プログラムは，参加した病院におけるメディケア支払額が，対照病院と比較してわずかな減少と関連していた．（米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた．）