September 2, 2021 Vol. 385 No. 10
前立腺癌スクリーニングにおける MRI 標的生検と標準的な生検との比較
MRI-Targeted or Standard Biopsy in Prostate Cancer Screening
M. Eklund and Others
過剰診断率の高さは,組織的な前立腺癌スクリーニングの重大な障壁となっている.MRI を用いた標的生検によってこの課題に対処できる可能性が示されているが,組織的な前立腺癌スクリーニングで用いることの意義は明らかにされていない.
前立腺癌スクリーニングに関する人口ベースの非劣性試験で,一般集団の 50~74 歳の男性に郵送で試験参加を呼びかけた.前立腺特異抗原(PSA)値が 3 ng/mL 以上の参加者を,標準的な生検を行う群(標準的生検群)と,MRI を行い,その結果から前立腺癌が示唆された場合に標的生検と標準的生検を行う群(実験的生検群)に 2:3 の割合で無作為に割り付けた.主要転帰は,intention-to-treat 集団における,臨床的に重要な癌(グリーソンスコア 7 以上)と診断された男性の割合とした.重要な副次的転帰は臨床的に重要でない癌(グリーソンスコア 6)の検出とした.
組み入れられた 12,750 例のうち,PSA 値 3 ng/mL 以上の 1,532 例を生検に無作為に割り付けた.内訳は標準的生検群 603 例,実験的生検群 929 例であった.intention-to-treat 解析において,臨床的に重要な癌と診断された男性は,実験的生検群では 192 例(21%)であったのに対し,標準的生検群では 106 例(18%)であった(差 3 パーセントポイント,95%信頼区間 [CI] -1~7,非劣性の P<0.001).臨床的に重要でない癌が検出された患者の割合は,実験的生検群のほうが標準的生検群よりも低かった(4% [41 例] 対 12% [73 例],差 -8 パーセントポイント,95% CI -11~-5).
人口ベースの参加募集型スクリーニング試験で,MRI の結果から前立腺癌が示唆された男性における MRI を用いた標的生検・標準的生検は,標準的生検と比較して,臨床的に重要な前立腺癌の検出に関して非劣性を示し,臨床的に重要でない癌の検出が少なかった.(スウェーデン研究評議会ほかから研究助成を受けた.STHLM3-MRI 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03377881)