April 28, 2022 Vol. 386 No. 17
安定胸痛における CT と侵襲的冠動脈造影との比較
CT or Invasive Coronary Angiography in Stable Chest Pain
The DISCHARGE Trial Group
閉塞性冠動脈疾患(CAD)の診断において,CT は侵襲的冠動脈造影(ICA)に代わる,精度の高い非侵襲的な検査法である.しかし,CAD の管理において,主要有害心血管イベントの頻度の低下における CT と ICA の相対的有効性は明らかにされていない.
閉塞性 CAD の検査前確率が中程度であり,欧州の 26 施設のいずれかに ICA を目的に紹介された安定胸痛患者において,治療の指針となる初回画像診断戦略として,CT を ICA と比較する実用的無作為化試験を行った.主要転帰は,3.5 年間の主要有害心血管イベント(心血管死,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中)とした.主な副次的転帰は,手技関連合併症と狭心症とした.
3,561 例(女性 56.2%)のうち,3,523 例(98.9%)が追跡調査を完了した.主要有害心血管イベントは,CT 群の 1,808 例中 38 例(2.1%),ICA 群の 1,753 例中 52 例(3.0%)に発生した(ハザード比 0.70,95%信頼区間 [CI] 0.46~1.07,P=0.10).重大な手技関連合併症は,CT 群の 9 例(0.5%),ICA 群の 33 例(1.9%)に発生した(ハザード比 0.26,95% CI 0.13~0.55).追跡期間の最後の 4 週間に報告された狭心症の頻度は,CT 群では 8.8%,ICA 群では 7.5%であった(オッズ比 1.17,95% CI 0.92~1.48).
安定胸痛を有し,CAD の検査前確率が中程度であるため ICA を目的に紹介された患者において,主要有害心血管イベントのリスクは,CT を行った群と ICA を行った群とで同程度であった.重大な手技関連合併症の頻度は,CT による初回戦略のほうが低かった.(欧州連合第 7 次フレームワークプログラムほかから研究助成を受けた.DISCHARGE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02400229)