ブタ–ヒト間の腎臓異種移植を行った 2 症例の結果
Results of Two Cases of Pig-to-Human Kidney Xenotransplantation
R.A. Montgomery and Others
遺伝子改変ブタからの異種移植は,移植用に入手可能なヒト臓器の不足の非常に有望な解決策の一つとなっている.この異種移植モデルの課題は超急性拒絶反応である.これを防ぐために,α-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子をノックアウトし,腎被膜下に自家胸腺組織を移植したブタが作製された.
この遺伝子改変ブタの腎臓を,脳死のヒトレシピエント 2 例に移植した.2 例の呼吸・循環機能は試験期間中,人工呼吸器により維持した.腎機能と異種移植片拒絶反応を評価するため,経時的に生検を行い,尿量と動的推算糸球体濾過量(eGFR)をモニタリングした.
両レシピエントの異種移植腎は,再灌流後すぐに尿を生成し始めた.試験期間の 54 時間のあいだに,動的 eGFR は,レシピエント 1 では移植前の 23 mL/分/1.73 m2 体表面積から移植後には 62 mL/分/1.73 m2 に増加し,レシピエント 2 では 55 mL/分/1.73 m2 から 109 mL/分/1.73 m2 に増加した.クレアチニン値は両レシピエントで定常状態であったが,異種移植後,レシピエント 1 では 1.97 mg/dL から 0.82 mg/dL に低下し,レシピエント 2 では 1.10 mg/dL から 0.57 mg/dL に低下した.移植腎は淡紅色で,灌流良好な状態が維持され,試験期間を通して尿を生成し続けた.6,24,48,54 時間の時点で行った生検では,超急性拒絶反応,抗体関連型拒絶反応の徴候は認められなかった.異種移植腎からの 1 時間尿量は,元の腎臓からの尿量の 2 倍を超えていた.
遺伝子改変ブタからの異種移植腎は,脳死のヒトレシピエントでは 54 時間は生着可能であり,機能を維持し,超急性拒絶反応の徴候はみられなかった.(ラング バイオテクノロジー社から研究助成を受けた.)