January 20, 2022 Vol. 386 No. 3
24 時間尿中ナトリウム・カリウム排泄量と心血管リスク
24-Hour Urinary Sodium and Potassium Excretion and Cardiovascular Risk
Y. Ma and Others
ナトリウム摂取量と心血管疾患との関連については議論が続いているが,ナトリウム摂取量を正確に評価できないことがその理由の一つである.24 時間尿中排泄量を数日間評価することが,正確な方法の一つになりうると考えられる.
おおむね健康な成人の 6 つの前向きコホートから,個々の参加者のデータを統合し,参加者 1 人あたり 2 回以上採取された 24 時間蓄尿検体を用いて,ナトリウム・カリウム排泄量を評価した.主要転帰は心血管イベント(冠血行再建,致死的・非致死的心筋梗塞,致死的・非致死的脳卒中)とした.各コホートを一貫した手法で解析し,変量効果メタ解析を用いて結果を統合した.
参加者は 10,709 例で,平均(±SD)年齢は 51.5±12.6 歳,54.2%が女性であった.中央値で 8.8 年の追跡期間中に,571 件の心血管イベントが確認された(発生率 1,000 人年あたり 5.9 件).24 時間尿中ナトリウム排泄量の中央値は 3,270 mg(10~90 パーセンタイル 2,099~4,899)であった.交絡因子を調整した解析において,ナトリウム排泄量が多く,カリウム排泄量が少なく,ナトリウム・カリウム比が高いほど,心血管リスクが高いことと関連していた(いずれの比較も P≦0.005).尿中バイオマーカーの第 4 四分位群(最高群)を第 1 四分位群(最低群)と比較した解析では,ナトリウム排泄量のハザード比は 1.60(95%信頼区間 [CI] 1.19~2.14),カリウム排泄量のハザード比は 0.69(95% CI 0.51~0.91),ナトリウム・カリウム比のハザード比は 1.62(95% CI 1.25~2.10)であった.1 日のナトリウム排泄量が 1,000 mg 増加すると心血管リスクの 18%上昇に関連し(ハザード比 1.18,95% CI 1.08~1.29),1 日のカリウム排泄量が 1,000 mg 増加すると心血管リスクの 18%低下に関連した(ハザード比 0.82,95% CI 0.72~0.94).
複数の 24 時間蓄尿検体で測定されたナトリウム摂取量が多く,カリウム摂取量が少ないことは,心血管リスクが高いことに用量依存的に関連した.これらの知見は,現在の摂取量よりもナトリウム摂取量を減らし,カリウム摂取量を増やすことを支持する可能性がある.(米国心臓協会,米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.)