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October 6, 2022 Vol. 387 No. 14

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経カテーテル大動脈弁置換術中の脳塞栓防止
Cerebral Embolic Protection during Transcatheter Aortic-Valve Replacement

S.R. Kapadia and Others

背景

大動脈弁狭窄症の治療を目的とした経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)では,デブリの塞栓が生じることがある.脳塞栓防止(CEP)デバイスでデブリを捕捉することにより,脳卒中のリスクが低下する可能性がある.

方 法

大動脈弁狭窄症患者を,経大腿動脈 TAVR 中に CEP を行う群(CEP 群)と行わない群(対照群)に,1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,intention-to-treat 集団における,TAVR 後 72 時間以内または退院まで(いずれか早い時点)に発生した脳卒中とした.後遺症の残る脳卒中,死亡,一過性脳虚血発作,せん妄,CEP アクセス部位の重大な,または軽微な血管合併症,急性腎障害も評価した.ベースライン時と TAVR 後に,神経内科の専門家が全例に検査を行った.

結 果

北米,欧州,オーストラリアで 3,000 例が無作為化され,1,501 例が CEP 群,1,499 例が対照群に割り付けられた.CEP デバイスの留置は,留置を試みた 1,489 例中 1,406 例(94.4%)で成功した.TAVR 後 72 時間以内または退院までの脳卒中発生率に,CEP 群と対照群とのあいだで有意差は認められなかった(2.3% 対 2.9%,差 -0.6 パーセントポイント,95%信頼区間 -1.7~0.5,P=0.30).後遺症の残る脳卒中は,CEP 群の 0.5%と対照群の 1.3%に発生した.死亡率に CEP 群と対照群とのあいだで大きな差はなく(0.5% 対 0.3%),脳卒中,一過性脳虚血発作,せん妄の複合発生率(3.1% 対 3.7%),急性腎障害の発生率(0.5% 対 0.5%)についても同様であった.CEP アクセス部位の血管合併症は 1 例(0.1%)に発生した.

結 論

経大腿動脈 TAVR を施行する大動脈弁狭窄症患者において,CEP の実施は周術期脳卒中の発生率に有意な影響を及ぼさなかったが,この転帰の 95%信頼区間に基づくと,今回の結果では TAVR 中の CEP の利益は否定されない可能性がある.(ボストン・サイエンティフィック社から研究助成を受けた.PROTECTED TAVR 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04149535)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 387 : 1253 - 63. )