November 10, 2022 Vol. 387 No. 19
調理用燃料が液化石油ガスの場合とバイオマスの場合とでの出生体重への影響の比較
Liquefied Petroleum Gas or Biomass for Cooking and Effects on Birth Weight
T.F. Clasen and Others
固形バイオマス燃料の燃焼による家庭内空気汚染への妊娠中の曝露は,出生時低体重などの有害な健康転帰と関連する.バイオマス調理用ストーブを液化石油ガス(LPG)調理用ストーブに交換することで,出生体重の増加につながるかどうかは明らかにされていない.
グアテマラ,インド,ペルー,ルワンダで,妊娠女性(18 歳~35 歳未満,妊娠 9 週~20 週未満 [超音波検査で確認])を対象とした無作為化比較試験を行った.女性を,無料の LPG 調理用ストーブと燃料を使用する群(介入群)と,バイオマス調理用ストーブの使用を継続する群(対照群)に 1:1 の割合で割り付けた.この論文では,事前に規定した 4 つの主要転帰のうちの 1 つである出生体重を主要転帰として報告する.ほかの 3 つの転帰のデータはまだ得られていない.出生体重は生後 24 時間以内に測定した.また,微小粒子状物質(粒径 2.5 μm 以下の粒子 [PM2.5]),ブラックカーボン,一酸化炭素への 24 時間個人曝露量を,ベースライン時と,妊娠中に 2 回測定した.
3,200 例が無作為化され,1,593 例が介入群,1,607 例が対照群に割り付けられた.介入はほぼ全例で受け入れられ,従来のバイオマス調理用ストーブの使用率の中央値は月 1 日未満であった.無作為化後の微小粒子状物質への 24 時間個人曝露量の中央値は,介入群で 23.9 μg/m3,対照群で 70.7 μg/m3 であった.生産児 3,060 例のうち,有効な出生体重は介入群の女性から出生した児の 94.9%と,対照群の女性から出生した児の 92.7%で得られた.出生体重の平均(±SD)は,介入群 2,921±474.3 g,対照群 2,898±467.9 g であり,補正後の差の平均は 19.5 g(95%信頼区間 -10.1~49.2)であった.
LPG 調理用ストーブを使用した女性から出生した児と,バイオマス調理用ストーブを使用した女性から出生した児とで,出生体重に有意差は認められなかった.(米国国立衛生研究所,ビル&メリンダ・ゲイツ財団から研究助成を受けた.HAPIN 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02944682)