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November 10, 2022 Vol. 387 No. 19

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刑務所システムにおけるワクチン接種と過去の感染のオミクロン株に対する防御効果
Protection against Omicron from Vaccination and Previous Infection in a Prison System

E.T. Chin and Others

背景

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)の B.1.1.529 変異株(オミクロン株)感染に対する,ワクチン接種と過去の感染による防御効果に関する情報は限られている.

方 法

カリフォルニア州の刑務所システムの「収容者」と「スタッフ」という 2 つの高リスク集団で,オミクロン株感染に対する mRNA ワクチンと過去の感染の,それぞれの防御効果を評価した.2021 年 12 月 24 日~2022 年 4 月 14 日に収集したデータを用いて,オミクロン株流行中の感染リスクを後ろ向きコホートデザインで分析した.サンプルの重み付けを行い,Cox モデルを用いて,ワクチン接種と過去の感染のそれぞれの有効率(1 からハザード比を引いた値)を,ワクチン接種歴(mRNA ワクチンの接種回数で層別化)と感染歴(なし,B.1.617.2 変異株 [デルタ株] 流行前の感染,デルタ株流行中の感染)のすべての組合せについて比較した.副次的解析では,ローリングマッチコホートデザインを用いて,ワクチンの 3 回接種の有効性を,2 回接種の有効性と比較評価した.

結 果

収容者 59,794 例,スタッフ 16,572 例のうち,ワクチン未接種者における過去の感染のオミクロン株感染に対する有効率は,デルタ株流行前の感染歴があるスタッフで 16.3%(95%信頼区間 [CI] 8.1~23.7),デルタ株流行中の感染歴があるスタッフで 48.9%(95% CI 41.6~55.3)と推定された.過去の感染状況別にみたワクチン接種の有効率(未接種,かつ記録されている過去の感染がない場合と比較)は,2 回接種している場合,感染歴なしの収容者で 18.6%(95% CI 7.7~28.1),デルタ株流行中の感染歴があるスタッフで83.2%(95% CI 77.7~87.4)と推定され,3 回接種している場合,感染歴なしの収容者で 40.9%(95% CI 31.9~48.7),デルタ株流行中の感染歴があるスタッフで 87.9%(95% CI 76.0~93.9)と推定された.3 回目接種(ブースター接種)の(2 回接種に対する)増分有効率を評価しえたのは,記録されている過去の感染がない人と,デルタ株流行前に感染した人であり,感染歴のない収容者で 25.0%(95% CI 16.6~32.5),感染歴のないスタッフで 57.9%(95% CI 48.4~65.7)と推定された.

結 論

2 つの高リスク集団から得られた知見は,mRNA ワクチン接種も過去の感染もオミクロン株感染の防御に有効であり,過去の感染の有効率は,デルタ株流行前に感染した人のほうが低いことを示唆している.ワクチンの 3 回接種は,感染歴がある人においても,2 回接種よりも有意に大きな防御効果をもたらした.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 387 : 1770 - 82. )