December 1, 2022 Vol. 387 No. 22
ADHD を有する 10 代の若者の運転者不注意を減らす訓練に関する試験
Trial of Training to Reduce Driver Inattention in Teens with ADHD
J.N. Epstein and Others
注意欠如・多動性障害(ADHD)を有する 10 代の若者は,自動車衝突事故のリスクが高い.衝突リスクに寄与する因子に,「道路から長時間目を離す行為」がある.これを減らすためのコンピュータ化された技能訓練プログラムにより,ADHD を有する 10 代の若者の運転リスクが改善する可能性がある.
ADHD を有する 16~19 歳の運転者において,道路から長時間(2 秒以上)目を離す行為を減らすために設計された,コンピュータ化された技能訓練プログラムを評価した.参加者を,長時間目を離す回数の減少を目標とするプログラムである集中力・注意力集中学習(FOCAL)を受ける群(介入群)と,強化した従来の運転者教育を受ける群(対照群)に,1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要転帰は,ベースライン時と,訓練後 1 ヵ月,6 ヵ月の時点で行った 15 分間の模擬運転 2 回における,道路から長時間目を離す回数と,車線内の位置の標準偏差(車線の中心から逸れる,側方移動の指標)とした.副次的転帰は,訓練後 1 年間の車内記録で評価した,長時間目を離す行為の発生率,および車両の運動量の突然の変化(G イベント)が関与する衝突事故または衝突危機の発生率とした.
訓練後の模擬運転では,長時間目を離す行為は,介入群の参加者は 1 ヵ月の時点で 1 回の運転あたり平均 16.5 回,6 ヵ月の時点で 15.7 回であったのに対し,対照群ではそれぞれ平均 28.0 回と 27.0 回であった(1 ヵ月の時点での発生率比 0.64,95%信頼区間 [CI] 0.52~0.76,P<0.001;6 ヵ月の時点での発生率比 0.64,95% CI 0.52~0.76,P<0.001).車線内の位置の標準偏差は,介入群では 1 ヵ月の時点で 0.98 SD,6 ヵ月の時点で 0.98 SD であったのに対し,対照群ではそれぞれ 1.20 SD と 1.20 SD であった(1 ヵ月の時点での差 -0.21 SD,95% CI -0.29~-0.13;6 ヵ月の時点での差 -0.22 SD,95% CI -0.31~-0.13;両比較について交互作用の P<0.001).訓練後 1 年間の実社会での運転時における,G イベントあたりの長時間目を離す行為の発生率は,介入群で 18.3%,対照群で 23.9%であった(相対リスク 0.76,95% CI 0.61~0.92).G イベントあたりの衝突事故または衝突危機の発生率は,それぞれ 3.4%と 5.6%であった(相対リスク 0.60,95% CI 0.41~0.89).
ADHD を有する 10 代の若者において,道路から長時間目を離す行為を減らすための,フィードバックを伴う特別に設計されたコンピュータ化された模擬運転プログラムは,対照プログラムと比較して,長時間目を離す行為の頻度と,車線内の位置の変動を減少させた.訓練後 1 年間の,実社会での運転時の衝突事故および衝突危機の発生率は,介入群のほうが低かった.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02848092)