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December 22, 2022 Vol. 387 No. 25

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Artemis 欠損重症複合免疫不全症に対するレンチウイルス遺伝子治療
Lentiviral Gene Therapy for Artemis-Deficient SCID

M.J. Cowan and Others

背景

DNA 修復酵素 Artemis は T 細胞,B 細胞の受容体の再構成に不可欠である.Artemis をコードする DCLRE1C の変異に起因する Artemis 欠損重症複合免疫不全症(ART-SCID)は,同種造血細胞移植に対する反応が乏しい.

方 法

新たに ART-SCID と診断された乳児 10 例において,DCLRE1C を含有するレンチウイルスベクターを導入した自家 CD34 陽性細胞の注入に関する第 1・2 相試験を行った.追跡期間の中央値は 31.2 ヵ月であった.

結 果

骨髄採取,ブスルファンによる前処置,レンチウイルス形質導入 CD34 陽性細胞注入によって,予想されたグレード 3 または 4 の有害事象が生じた.全例が,注入後 42 日の時点で事前に規定した実施可能性の基準を満たした.遺伝子標識した T 細胞は,全例で注入後 6~16 週目に検出された.24 ヵ月以上追跡された 6 例のうち,T 細胞の免疫再構築は 5 例で,中央値 12 ヵ月の時点で認められた.T 細胞受容体 β 鎖の多様性は 6~12 ヵ月までに正常化した.24 ヵ月以上追跡された 4 例に,IgG 注入を中止するのに十分な B 細胞数,IgM 濃度,IgM 同種血球凝集反応抗体価のいずれかが認められた.この 4 例のうち,3 例は予防接種に正常な反応を示し,4 例目の患児は予防接種を開始したところであった.ベクター挿入部位にはクローン増殖の証拠は認められなかった.サイトメガロウイルス感染症を発症した 1 例には,ウイルス排除に十分な T 細胞免疫を獲得するために,遺伝子修正細胞の 2 回目の注入を行った.4 例に自己免疫性溶血性貧血が,注入後 4~11 ヵ月の時点で発現したが,T 細胞免疫の再構築後に回復した.この報告の時点で,10 例全例が健康であった.

結 論

新たに ART-SCID と診断された乳児に,薬理学的に標的を絞った低曝露量のブスルファンによる前処置後,レンチウイルス遺伝子で修正した自家 CD34 陽性細胞の注入を行った結果,遺伝的に修正された機能性の T 細胞と B 細胞が発生した.(米国カリフォルニア州再生医療機構,米国国立アレルギー感染症研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03538899)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 387 : 2344 - 55. )