December 29, 2022 Vol. 387 No. 26
ICU 患者のせん妄治療におけるハロペリドール
Haloperidol for the Treatment of Delirium in ICU Patients
N.C. Andersen-Ranberg and Others
ハロペリドールは,集中治療室(ICU)患者のせん妄の治療に使用されることが多いが,その効果のエビデンスは限られている.
多施設共同盲検プラセボ対照試験で,急性疾患で ICU に入室し,せん妄が認められた成人患者を,ハロペリドール(2.5 mg を 1 日 3 回,必要に応じて 2.5 mg を投与,1 日最大用量は 20 mg)を静脈内投与する群と,プラセボを投与する群に無作為に割り付けた.ハロペリドールまたはプラセボは,ICU 内でせん妄が持続する限り投与し,再発して必要となった場合にも投与した.主要転帰は,無作為化後 90 日の時点での院外生存日数とした.
1,000 例が無作為化され,510 例がハロペリドール群,490 例がプラセボ群に割り付けられた.このうち 987 例(98.7%)が最終解析の対象となった(ハロペリドール群 501 例,プラセボ群 486 例).主要転帰データは 963 例(97.6%)から得られた.90 日の時点で,院外生存日数の平均は,ハロペリドール群で 35.8 日(95%信頼区間 [CI] 32.9~38.6),プラセボ群で 32.9 日(95% CI 29.9~35.8)であり,補正後の差の平均は 2.9 日(95% CI -1.2~7.0)であった(P=0.22).90 日死亡率は,ハロペリドール群で 36.3%,プラセボ群で 43.3%であった(補正後の絶対差 -6.9 パーセントポイント [95% CI -13.0~-0.6]).重篤な有害反応は,ハロペリドール群の 11 例とプラセボ群の 9 例に発現した.
ICU 在室中にせん妄を認めた患者にハロペリドールを投与しても,プラセボを投与した場合と比較して,90 日の時点での院外生存日数は有意には増加しなかった.(デンマークイノベーション基金ほかから研究助成を受けた.AID-ICU 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03392376,EudraCT 登録番号 2017-003829-15)