March 23, 2023 Vol. 388 No. 12
介護施設における Covid-19 サーベイランス検査と入居者の転帰
Covid-19 Surveillance Testing and Resident Outcomes in Nursing Homes
B.E. McGarry, A.D. Gandhi, and M.L. Barnett
高度介護施設の職員には,新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のサーベイランス検査が広く実施されているにもかかわらず,施設入居者の転帰との関連に関するエビデンスは限られている.
2020~22 年のデータを用いて,高度介護施設 13,424 ヵ所の職員における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)検査に関する後ろ向きコホート研究を,3 つのパンデミック期間,すなわちワクチン承認前,B.1.1.529 変異株(オミクロン株)流行期前,オミクロン株流行期中について実施した.Covid-19 の症例が発生していない週における職員の検査数を,同じ郡内のほかの高度介護施設との比較で評価し,アウトブレイク(2 週間症例がなかったあとの症例の発生と定義)が発生していた可能性のある期間(以下「潜在的アウトブレイク」)中の入居者における Covid-19 の症例と死亡を評価した.検査数の多かった施設(検査数が 90 パーセンタイル)と少なかった施設(10 パーセンタイル)との,補正後の転帰の差を報告する.主要転帰は,潜在的アウトブレイク中の入居者における Covid-19 症例と Covid-19 関連死の,1 週間の累積数とした.
研究期間全体において,検査数の多かった施設の入居者では,潜在的アウトブレイク 100 件あたり 519.7 例の Covid-19 症例が報告されたのに対し,検査数の少なかった施設の入居者では 591.2 例であった(補正後の差 -71.5,95%信頼区間 [CI] -91.3~-51.6).死亡は,検査数の多かった施設では,潜在的アウトブレイク 100 件あたり 42.7 例発生したのに対し,検査数の少なかった施設では 49.8 例であった(補正後の差 -7.1,95% CI -11.0~-3.2).ワクチンが利用可能になる前の期間については,潜在的アウトブレイク 100 件あたりの症例数は,検査数の多かった施設と少なかった施設でそれぞれ 759.9 例と 1,060.2 例であり(補正後の差 -300.3,95% CI -377.1~-223.5),死亡数は 125.2 例と 166.8 例であった(補正後の差 -41.6,95% CI -57.8~-25.5).オミクロン株流行期前は,検査数の多かった施設と少なかった施設とで,症例数,死亡数は同程度であった.オミクロン株流行期中は,入居者における症例数は検査数の多かった施設のほうが少なかったが,死亡数は同程度であった.
高度介護施設の職員に対するサーベイランス検査が多かったことは,とくにワクチンが利用可能になる前については,入居者における Covid-19 症例と Covid-19 関連死の臨床的に意味のある減少と関連した.