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January 12, 2023 Vol. 388 No. 2

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慢性腎臓病患者に対するエンパグリフロジン
Empagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease

The EMPA-KIDNEY Collaborative Group

背景

慢性腎臓病が進行するリスクのある患者に対するエンパグリフロジンの効果は,十分に解明されていない.EMPA-KIDNEY 試験は,慢性腎臓病を有する多様な患者に対するエンパグリフロジンによる治療の効果を評価する目的でデザインされた.

方 法

慢性腎臓病を有し,推算糸球体濾過量(eGFR)が 20 mL 以上 45 mL 未満/分/1.73 m2 体表面積であるか,45 mL 以上 90 mL 未満/分/1.73 m2 で尿中アルブミン/クレアチニン比(mg/g クレアチニン)200 以上の患者を組み入れた.患者を,エンパグリフロジン(10 mg を 1 日 1 回)を投与する群と,マッチさせたプラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要転帰は,腎臓病の進行(末期腎不全,eGFR の 10 mL/分/1.73 m2 未満への低下の持続,eGFR のベースラインから 40%以上の低下の持続,腎臓が原因の死亡のいずれかと定義),または心血管系の原因による死亡の複合とした.

結 果

6,609 例が無作為化された.中央値で 2.0 年の追跡期間中,腎臓病の進行または心血管系の原因による死亡は,エンパグリフロジン群の 3,304 例中 432 例(13.1%),プラセボ群の 3,305 例中 558 例(16.9%)に発生した(ハザード比 0.72,95%信頼区間 [CI] 0.64~0.82,P<0.001).結果は,糖尿病を有する患者と有しない患者で一致し,eGFR の範囲で定義したサブグループ間でも一致した.あらゆる原因による入院の発生率は,エンパグリフロジン群のほうがプラセボ群よりも低かったが(ハザード比 0.86,95% CI 0.78~0.95,P=0.003),心不全による入院または心血管系の原因による死亡の複合転帰には,群間に有意差は認められず(エンパグリフロジン群の 4.0%,プラセボ群の 4.6%に発生),全死因死亡についても認められなかった(それぞれ 4.5%,5.1%).重篤な有害事象の発現率は 2 群で同程度であった.

結 論

慢性腎臓病が進行するリスクのある多様な患者において,エンパグリフロジン治療により,プラセボと比較して,腎臓病の進行または心血管系の原因による死亡のリスクが低くなった.(ベーリンガーインゲルハイム社ほかから研究助成を受けた.EMPA-KIDNEY 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03594110,EudraCT 登録番号 2017-002971-24)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 388 : 117 - 27. )