米国におけるエムポックスに対する JYNNEOS ワクチンの有効性
Vaccine Effectiveness of JYNNEOS against Mpox Disease in the United States
N.P. Deputy and Others
米国では,2023 年 3 月 1 日の時点で,30,000 例を超えるエムポックス(これまで「サル痘」として知られていたもの)が発生しており,トランスジェンダーの人や,同性愛者,両性愛者,その他の男性と性交渉をもつ男性が不均衡に多く罹患している.2019 年,エムポックス感染の予防を目的とした JYNNEOS ワクチンの皮下投与(1 回 0.5 mL)が承認された.2022 年 8 月 9 日には,皮内投与(1 回 0.1 mL)の緊急使用承認が出された.しかし,いずれの投与経路についても,実臨床での有効性データは限られている.
成人の受診にいたるエムポックス予防における JYNNEOS ワクチン接種の有効性を評価するため,全米規模の電子診療録(EHR)データベース Epic Cosmos のデータに基づく症例対照研究を行った.研究期間は 2022 年 8 月 15 日~2022 年 11 月 19 日で,症例は,エムポックス診断コードが記録された患者,またはオルソポックスウイルスもしくはエムポックスウイルスの検査結果が陽性であった患者とし,対照は,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染が新規に診断された患者,または HIV 感染の曝露前予防薬の新規もしくは補充の処方があった患者とした.オッズ比と 95%信頼区間を,交絡因子を補正した条件付きロジスティック回帰モデルから推定した.ワクチンの有効性は(1-対照患者に対する症例患者のワクチン接種のオッズ比)×100 で計算した.
症例患者 2,193 例,対照患者 8,319 例のうち,症例患者 25 例と対照患者 335 例が 2 回の接種を受け(完全接種),補正後のワクチン有効率は 66.0%(95%信頼区間 [CI] 47.4~78.1)と推定された.症例患者 146 例と対照患者 1,000 例が 1 回の接種を受け(部分接種),補正後のワクチン有効率は 35.8%(95% CI 22.1~47.1)と推定された.
全米規模の EHR データを用いたこの研究では,エムポックス患者は,JYNNEOS ワクチンの接種を 1 回または 2 回受けている確率が,対照患者よりも低かった.今回の知見は,JYNNEOS ワクチンがエムポックス予防に有効であり,2 回接種の防御効果がより高いことを示唆している.(米国疾病対策予防センター,Epic Research から研究助成を受けた.)