January 26, 2023 Vol. 388 No. 4
再発または難治性の慢性リンパ性白血病に対するザヌブルチニブとイブルチニブとの比較
Zanubrutinib or Ibrutinib in Relapsed or Refractory Chronic Lymphocytic Leukemia
J.R. Brown and Others
国際共同第 3 相直接比較試験でわれわれは,再発または難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療薬として,ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるイブルチニブを,それより特異性の高い BTK 阻害薬であるザヌブルチニブ(zanubrutinib)と比較した.事前に規定した中間解析では,全奏効(主要エンドポイント)に関して,ザヌブルチニブのほうがイブルチニブよりも良好であった.無増悪生存に関する最終解析のデータが利用可能となった.
再発または難治性の CLL または SLL を有し,1 種類以上の治療歴のある患者を,病勢進行または忍容できない毒性が発生するまで,ザヌブルチニブを投与する群とイブルチニブを投与する群に,1:1 の割合で無作為に割り付けた.最終解析では,ザヌブルチニブがイブルチニブに対して非劣性であるかを検証するために,無増悪生存(重要な副次的エンドポイント)を,階層的検定法を用いて評価した.非劣性が確認された場合,ザヌブルチニブの優越性について評価し,両側 P 値が 0.05 未満であれば,ザヌブルチニブの優越性を示すものとした.
追跡期間中央値 29.6 ヵ月の時点で,試験担当医師の評価によると,652 例における無増悪生存に関して,ザヌブルチニブはイブルチニブに対して優越性を示し(病勢進行または死亡のハザード比 0.65,95%信頼区間 [CI] 0.49~0.86,P=0.002),この結果は,独立審査委員会の評価による結果と同様であった.24 ヵ月の時点で,試験担当医師の評価による無増悪生存率は,ザヌブルチニブ群で 78.4%,イブルチニブ群で 65.9%であった.17p 欠失または TP53 変異,あるいはその両方を有する患者のうち,ザヌブルチニブの投与を受けた患者は,イブルチニブの投与を受けた患者よりも無増悪生存期間が長く(病勢進行または死亡のハザード比 0.53,95% CI 0.31~0.88),その他の主要なサブグループにおいても,無増悪生存期間はザヌブルチニブのほうが良好であった.全奏効割合は,ザヌブルチニブ群のほうがイブルチニブ群よりも高かった.ザヌブルチニブの安全性プロファイルは,イブルチニブよりも良好で,投与中止にいたった有害事象は少なく,心イベントも,投与中止または死亡にいたった心イベントを含めて,少なかった.
再発または難治性の CLL または SLL 患者において,ザヌブルチニブの投与を受けた場合,イブルチニブの投与を受けた場合よりも無増悪生存期間が有意に長く,ザヌブルチニブは心臓有害事象がイブルチニブよりも少ないことと関連していた.(ベイジーン社から研究助成を受けた.ALPINE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03734016)