September 21, 2023 Vol. 389 No. 12
駆出率の保たれた心不全と肥満を有する患者に対するセマグルチド
Semaglutide in Patients with Heart Failure with Preserved Ejection Fraction and Obesity
M.N. Kosiborod and Others
駆出率の保たれた心不全は,有病率が上昇しており,とくに肥満者では,症状の負担が大きいことと機能の低下と関連している.肥満に関連する,駆出率の保たれた心不全を標的とする治療薬は承認されていない.
駆出率の保たれた心不全を有し,体格指数(BMI;体重 [kg]/身長 [m]2)30 以上の患者 529 例を,セマグルチド(2.4 mg)を週 1 回,52 週間投与する群と,プラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,カンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS;スコア範囲は 0~100 で,数値が高いほど症状と身体的制限が少ないことを示す)のベースラインからの変化量と,体重の変化の 2 つとした.確認的副次的エンドポイントは,6 分間歩行距離の変化量;死亡,心不全イベント,KCCQ-CSS の変化量の差,6 分間歩行距離の変化量の差で構成される階層的複合エンドポイント;C 反応性蛋白(CRP)値の変化とした.
KCCQ-CSS の変化量平均値は,セマグルチド群 16.6 点,プラセボ群 8.7 点であり(推定差 7.8 点,95%信頼区間 [CI] 4.8~10.9,P<0.001),体重の変化(%)の平均値はそれぞれ -13.3%,-2.6%であった(推定差 -10.7 パーセントポイント,95% CI -11.9~-9.4,P<0.001).6 分間歩行距離の変化量平均値は,セマグルチド群 21.5m,プラセボ群 1.2 m であった(推定差 20.3 m,95% CI 8.6~32.1,P<0.001).階層的複合エンドポイントの解析では,セマグルチド群のほうがプラセボ群よりも「勝利(win)」が多かった(win 比 1.72,95% CI 1.37~2.15,P<0.001).CRP 値の変化(%)の平均値は,セマグルチド群 -43.5%,プラセボ群 -7.3%であった(推定治療比 0.61,95% CI 0.51~0.72,P<0.001).重篤な有害事象は,セマグルチド群では 35 例(13.3%),プラセボ群では 71 例(26.7%)で報告された.
駆出率の保たれた心不全と肥満を有する患者において,セマグルチド(2.4 mg)による治療によって,プラセボと比較して,症状と身体的制限が軽減し,運動機能が改善し,体重が減少した.(ノボ ノルディスク社から研究助成を受けた.STEP-HFpEF 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04788511)