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July 13, 2023 Vol. 389 No. 2

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テストステロン補充療法の心血管安全性
Cardiovascular Safety of Testosterone-Replacement Therapy

A.M. Lincoff and Others

背景

性腺機能低下症の中高年男性における,テストステロン補充療法の心血管安全性は明らかにされていない.

方 法

多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照非劣性試験で,心血管疾患の既往を有する,またはそのリスクが高く,性腺機能低下症の症状を訴え,空腹時テストステロンの 2 回の測定値が 300 ng/dL 未満であった 45~80 歳の男性 5,246 例を組み入れた.患者を,1.62%テストステロンゲル(テストステロン濃度 350~750 ng/dL を維持するように用量を調節)を 1 日 1 回塗布する群と,プラセボゲルを塗布する群に無作為に割り付けた.心血管安全性の主要エンドポイントは,心血管系の原因による死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳梗塞の複合項目のいずれかの最初の発生とし,生存時間(time-to-event)解析で評価した.副次的心血管エンドポイントは,心血管系の原因による死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳梗塞,冠血行再建術の複合項目のいずれかの最初の発生とし,生存時間解析で評価した.テストステロンまたはプラセボを 1 回以上投与された患者において,ハザード比の 95%信頼区間の上限が 1.5 未満である場合に非劣性が示されることとした.

結 果

平均(±SD)投与期間は 21.7±14.1 ヵ月,平均追跡期間は 33.0±12.1 ヵ月であった.主要心血管エンドポイントのイベントは,テストステロン群では 182 例(7.0%),プラセボ群では 190 例(7.3%)に発生した(ハザード比 0.96,95%信頼区間 0.78~1.17,非劣性の P<0.001).イベントに関するデータを,テストステロンまたはプラセボの中止後のさまざまな時点で打ち切った感度分析でも同様の結果が認められた.副次的エンドポイントのイベントの発生率,複合主要心血管エンドポイントの各項目の発生率は,2 群で同程度と考えられた.心房細動,急性腎障害,肺塞栓症の発生率は,テストステロン群のほうが高かった.

結 論

心血管疾患の既往を有する,またはそのリスクが高い性腺機能低下症の男性において,テストステロン補充療法は,主要有害心イベントの発生に関して,プラセボに対して非劣性を示した.(アッヴィ社ほかから研究助成を受けた.TRAVERSE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03518034)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 107 - 17. )