September 21, 2023 Vol. 389 No. 12
前臨床期アルツハイマー病に対するソラネズマブの試験
Trial of Solanezumab in Preclinical Alzheimer's Disease
R.A. Sperling and Others
アルツハイマー病のさまざまな段階の,さまざまな形態のアミロイドを標的とするモノクローナル抗体の試験が行われているが,結果は一致していない.
単量体アミロイドを標的とするソラネズマブ(solanezumab)を,前臨床期アルツハイマー病の人を対象とする第 3 相試験で検証した.全般的臨床認知症評価尺度(CDR)のスコアが 0(スコア範囲は 0~3 で,0 は認知機能障害なし,3 は重度の認知症であることを示す),ミニメンタルステート検査(MMSE)のスコアが 25 以上(スコア範囲は 0~30 で,数値が低いほど認知機能が低下していることを示す)で,18F-フロルベタピル陽電子放射断層撮影(PET)で脳内アミロイド量が増加していた 65~85 歳の人を組み入れた.参加者を,ソラネズマブ 1,600 mg(最大用量)を 4 週ごとに静脈内投与する群と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,240 週の期間における,前臨床期アルツハイマー病認知機能複合評価指標(PACC)スコア(4 つの z スコアの合計として算出し,数値が高いほど認知機能が良好であることを示す)の変化量とした.
1,169 例が無作為化され,578 例がソラネズマブ群,591 例がプラセボ群に割り付けられた.参加者の平均年齢は 72 歳で,約 60%が女性,約 75%に認知症の家族歴があった.240 週の時点での PACC スコアの変化量平均値は,ソラネズマブ群 -1.43,プラセボ群 -1.13 であった(差 -0.30,95%信頼区間 -0.82~0.22,P=0.26).脳 PET 上のアミロイド量は,平均で,ソラネズマブ群では 11.6 センチロイド増加し,プラセボ群では 19.3 センチロイド増加した.浮腫を伴うアミロイド関連画像異常(ARIA)の発生率は,各群 1%未満であった.微小出血またはヘモジデリン沈着を伴う ARIA の発生率は,ソラネズマブ群では 29.2%,プラセボ群では 32.8%であった.
前臨床期アルツハイマー病の人において,脳内アミロイド量が増加している人の単量体アミロイドを標的とするソラネズマブは,240 週の期間中,プラセボと比較して,認知機能の低下を抑制しなかった.(米国国立老化研究所ほかから研究助成を受けた.A4 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02008357)