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October 19, 2023 Vol. 389 No. 16

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関節形成術時の手術部位感染予防抗菌薬としてのバンコマイシンとセファゾリンの試験
Trial of Vancomycin and Cefazolin as Surgical Prophylaxis in Arthroplasty

T.N. Peel and Others

背景

関節形成術において,予防的なβラクタム系薬投与にバンコマイシンを追加することで,手術部位感染を減らせる可能性があるが,有効性と安全性は明らかでない.

方 法

多施設共同二重盲検優越性プラセボ対照試験で,関節形成術が予定されている,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)の保菌が確認されていない成人患者を,セファゾリンの予防投与に加えて,バンコマイシン 1.5 g の投与を行う群と,プラセボとして生理食塩水の投与を行う群に無作為に割り付けた.主要転帰は術後 90 日以内の手術部位感染とした.

結 果

4,239 例が無作為化された.修正 intention-to-treat 集団 4,113 例(2,233 例が膝関節形成術,1,850 例が股関節形成術,30 例が肩関節形成術を受けた)のうち,手術部位感染はバンコマイシン群の 2,044 例中 91 例(4.5%)と,プラセボ群の 2,069 例中 72 例(3.5%)に発生した(相対リスク 1.28,95%信頼区間 [CI] 0.94~1.73,P=0.11).膝関節形成術を受けた患者では,手術部位感染はバンコマイシン群の 1,109 例中 63 例(5.7%)と,プラセボ群の 1,124 例中 42 例(3.7%)に発生した(相対リスク 1.52,95% CI 1.04~2.23).股関節形成術を受けた患者では,手術部位感染はバンコマイシン群の 920 例中 28 例(3.0%)と,プラセボ群の 930 例中 29 例(3.1%)に発生した(相対リスク 0.98,95% CI 0.59~1.63).有害事象は,バンコマイシン群の 2,010 例中 35 例(1.7%)と,プラセボ群の 2,030 例中 35 例(1.7%)に発現し,そのうち,過敏反応はそれぞれ 2,010 例中 24 例(1.2%)と 2,030 例中 11 例(0.5%)(相対リスク 2.20,95% CI 1.08~4.49),急性腎障害はそれぞれ 2,010 例中 42 例(2.1%)と 2,030 例中 74 例(3.6%)であった(相対リスク 0.57,95% CI 0.39~0.83).

結 論

MRSA の保菌が確認されていない患者の関節形成術時に,手術部位感染予防抗菌薬として投与するセファゾリンにバンコマイシンを追加しても,プラセボを追加した場合と比較して優れてはいなかった.(オーストラリア国立保健医療研究評議会から研究助成を受けた.Australian New Zealand Clinical Trials Registry 番号 ACTRN12618000642280)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 1488 - 98. )