December 21, 2023 Vol. 389 No. 25
重症 Covid-19 患者に対するシンバスタチン
Simvastatin in Critically Ill Patients with Covid-19
The REMAP-CAP Investigators
重症新型コロナウイルス感染症(Covid-19)患者に対するシンバスタチンの有効性は不明である.
現在進行中の国際共同多因子適応型プラットフォーム無作為化比較試験において,ベースライン時にスタチンの投与を受けていなかった重症 Covid-19 患者を対象として,シンバスタチン投与(80 mg/日)とスタチン非投与(対照)とを比較評価した.主要転帰は呼吸器,心血管系の臓器サポートを受けていない日数とし,院内死亡(-1 の値を割り当てる)と,生存者における 21 日目までの臓器サポートを受けていない日数を組み合わせた順序尺度で評価した.解析にはベイズ階層的順序モデルを用いた.適応的デザインとして,優越性の統計的中止基準(オッズ比が 1 を上回る事後確率>99%)と,無益性の統計的中止基準(オッズ比が 1.2 を下回る事後確率>95%)を事前に規定した.
2020 年 10 月 28 日に組入れが開始された.Covid-19 症例の減少により,事前に規定した中止基準が満たされる予測確率が低くなったことから,組入れは 2023 年 1 月 8 日に終了された.重症患者 2,684 例が最終解析の対象となった.臓器サポートを受けていない日数の中央値は,シンバスタチン群 11(四分位範囲 -1~17),対照群 7(四分位範囲 -1~16)であり,対照と比較したシンバスタチンの事後補正オッズ比の中央値は 1.15(95%信用区間 0.98~1.34)であり,優越性の事後確率は 95.9%となった.90 日の時点で,生存のハザード比は 1.12(95%信用区間 0.95~1.32)であり,シンバスタチンの優越性の事後確率は 91.9%となった.副次的解析の結果は,主要解析の結果と一致していた.肝酵素上昇,クレアチンキナーゼ上昇などの重篤な有害事象の報告は,シンバスタチン群のほうが対照群よりも多かった.
症例が減少したため募集は中止されたものの,重症 Covid-19 患者において,シンバスタチンは,対照に対する事前に規定した優越性の基準を満たさなかった.(REMAP-CAP 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02735707)