ワクチン接種または未接種の成人 Covid-19 外来患者に対するニルマトレルビル
Nirmatrelvir for Vaccinated or Unvaccinated Adult Outpatients with Covid-19
J. Hammond and Others
ニルマトレルビルをリトナビルと併用する治療法は,軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に対する抗ウイルス療法の 1 つである.重症 Covid-19 のリスクが標準的な患者や,ワクチン接種を完了している,重症 Covid-19 の危険因子を 1 つ以上有する患者におけるこの治療法の有効性は確立されていない.
第 2・3 相試験で,Covid-19 が確認され,症状発現後 5 日以内の成人を,ニルマトレルビル/リトナビルの投与を 12 時間ごとに 5 日間行う群と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.Covid-19 に対するワクチン接種を完了している,重症 Covid-19 の危険因子を 1 つ以上有する患者と,そのような危険因子を有さず,Covid-19 に対するワクチン接種を受けたことがないか,過去 1 年間受けていない患者を適格とした.参加者は,事前に規定した Covid-19 の徴候・症状の有無と重症度を,1 日目から 28 日目まで毎日記録した.主要エンドポイントは,標的とした Covid-19 の徴候・症状すべての持続的軽減が得られるまでの時間とした.Covid-19 関連入院と全死因死亡も 28 日目まで評価した.
無作為化され,最大の解析対象集団とされた 1,296 例のうち,1,288 例がニルマトレルビル/リトナビル(654 例)またはプラセボ(634 例)の投与を 1 回以上受け,ベースライン後に 1 回以上受診した.標的とした Covid-19 の徴候・症状すべての持続的軽減が得られるまでの時間の中央値は,ニルマトレルビル/リトナビル群で 12 日,プラセボ群で 13 日であった(P=0.60).ニルマトレルビル/リトナビル群の 5 例(0.8%)とプラセボ群の 10 例(1.6%)が,Covid-19 による入院または全死因死亡にいたった(差 -0.8 パーセントポイント,95%信頼区間 -2.0~0.4).有害事象が発現した参加者の割合は 2 群で同程度であった(ニルマトレルビル/リトナビル群 25.8%,プラセボ群 24.1%).ニルマトレルビル/リトナビル群で報告の多かった治療関連有害事象は,味覚障害(5.8%)と下痢(2.1%)であった.
ニルマトレルビル/リトナビルの投与を受けた参加者と,プラセボの投与を受けた参加者とのあいだで,Covid-19 の徴候・症状すべての持続的軽減が得られるまでの時間に有意差は認められなかった.(ファイザー社から研究助成を受けた.EPIC-SR 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05011513)