輸血依存性βサラセミアに対するエクサガムグロジーン オートテムセル
Exagamglogene Autotemcel for Transfusion-Dependent β-Thalassemia
F. Locatelli and Others
エクサガムグロジーン オートテムセル(exagamglogene autotemcel [exa-cel])は,胎児ヘモグロビン合成を再活性化するようデザインされた非ウイルス性細胞療法であり,生体外で「クラスター化された,規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)」–Cas9 を用いて,自己 CD34 陽性造血幹細胞・前駆細胞(HSPCs)の BCL11A の赤血球系特異的エンハンサー領域をゲノム編集する.
輸血依存性βサラセミアと,β0/β0,β0/β0 様,非 β0/β0 様いずれかの遺伝子型を有する 12~35 歳の患者を対象として,exa-cel の非盲検単群第 3 相試験を行った.ガイド mRNA を用いた CRISPR-Cas9 により,CD34 陽性 HSPCs のゲノム編集を行った.exa-cel 注入前に,薬物動態に基づいて用量を調整したブスルファンによる骨髄破壊的前処置を行った.主要エンドポイントは輸血非依存状態とし,赤血球輸血なしで,連続 12 ヵ月以上,ヘモグロビン値の加重平均値が 9 g/dL 以上であることと定義した.総ヘモグロビン濃度,胎児ヘモグロビン濃度,安全性も評価した.
輸血依存性βサラセミア患者 52 例が exa-cel の注入を受け,事前に規定した中間解析の対象となった.追跡期間の中央値は 20.4 ヵ月(範囲 2.1~48.1)であった.各患者で,好中球と血小板の生着が得られた.評価に十分な追跡データが存在した 35 例のうち,輸血非依存状態は 32 例(91%,95%信頼区間 77~98,P<0.001 で奏効割合 50%という帰無仮説は棄却)に発生した.輸血非依存状態中,総ヘモグロビン濃度の平均値は 13.1 g/dL,胎児ヘモグロビン濃度の平均値は 11.9 g/dL であり,胎児ヘモグロビンは核と細胞質の両方に分布していた(赤血球の 94%以上).exa-cel の安全性プロファイルは,ブスルファンによる骨髄破壊的前処置,および自己 HSPC 移植とおおむね一致していた.死亡,癌は発生しなかった.
骨髄破壊的前処置を行う exa-cel を用いた治療により,輸血依存性βサラセミア患者の 91%で輸血非依存状態が得られた.(バーテックス ファーマシューティカルズ社,CRISPR セラピューティクス社から研究助成を受けた.CLIMB THAL-111 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03655678)