COPD と喘息の早期診断と治療 ― 無作為化比較試験
Early Diagnosis and Treatment of COPD and Asthma — A Randomized, Controlled Trial
S.D. Aaron and Others
慢性閉塞性肺疾患(COPD)または喘息を有する人の多くは診断を受けておらず,その呼吸器症状の大部分は未治療のままである.
症例発見法を用いて,地域内で,肺疾患の診断を受けていないが呼吸器症状を有する成人を同定した.スパイロメトリーで未診断の COPD または喘息が判明した参加者を多施設共同無作為化比較試験に組み入れ,早期診断と治療により呼吸器疾患での医療利用が減少し,健康転帰が改善するかどうかを検討した.参加者を,介入(ガイドラインに基づく治療の開始について教育を受けた呼吸器科医と喘息・COPD エデュケーターによる評価)を行う群と,プライマリケア医による通常治療を行う群に割り付けた.主要転帰は,参加者自身による呼吸器疾患での年間医療利用率とした.副次的転帰は,セントジョージ呼吸器質問票(SGRQ;0~100 で,数値が低いほど健康状態が良好であることを示す)で評価した疾患特異的 QOL,COPD アセスメントテスト(CAT;0~40 で,数値が低いほど健康状態が良好であることを示す)で評価した症状負担,1 秒量(FEV1)のベースラインから 1 年までの変化量などとした.
聞き取り調査を受けた 38,353 例のうち,595 例で未診断の COPD または喘息が判明し,508 例が無作為化された.253 例が介入群,255 例が通常治療群に割り付けられた.主要転帰イベントの年間発生率は,介入群のほうが通常治療群よりも低かった(0.53 件/人年 対 1.12 件/人年,発生率比 0.48,95%信頼区間 [CI] 0.36~0.63,P<0.001).12 ヵ月の時点で,SGRQ スコアは,介入群ではベースラインスコアと比較して 10.2 ポイント低く,通常治療群では 6.8 ポイント低く(差 -3.5 ポイント,95% CI -6.0~-0.9),CAT スコアは,ベースラインスコアと比較してそれぞれ 3.8 ポイントと 2.6 ポイント低かった(差 -1.3 ポイント,95% CI -2.4~-0.1).FEV1 は,介入群では 119 mL 増加し,通常治療群では 22 mL 増加した(差 94 mL,95% CI 50~138).有害事象の発現率は 2 群で同程度であった.
地域内の未診断の喘息または COPD を有する成人を同定するための手法を用いた試験で,呼吸器科医の治療を受けた患者は,通常治療を受けた患者よりも,その後の呼吸器疾患での医療利用が少なかった.(カナダ保健研究機構から研究助成を受けた.UCAP 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03148210)