進行性腫瘍を伴う NF2 関連神経鞘腫症に対するブリグチニブ
Brigatinib in NF2-Related Schwannomatosis with Progressive Tumors
S.R. Plotkin and Others
NF2 関連神経鞘腫症(NF2-SWN,旧称:神経線維腫症 2 型)は腫瘍素因症候群であり,多発性の前庭神経鞘腫,非前庭神経鞘腫,髄膜腫,上衣腫で発症する.この疾患は確実に進行し,承認された治療はない.ブリグチニブ(複数のチロシンキナーゼに対する阻害薬)は,前臨床研究で NF2 による非前庭神経鞘腫と髄膜腫に対する活性が示されたことから,複数種類の進行性 NF2-SWN 腫瘍を有する患者への使用に関するデータが必要となった.
バスケットデザインの第 2 相プラットフォーム試験で,NF2-SWN と進行性腫瘍を有する 12 歳以上の患者にブリグチニブ 180 mg/日を経口投与した.各患者の標的腫瘍 1 個と,非標的腫瘍最大 5 個を中央判定委員会が評価した.主要転帰は標的腫瘍の放射線学的奏効とした.主な副次的転帰は,安全性,すべての腫瘍における奏効割合,聴覚に対する効果,患者報告アウトカムとした.
標的とする進行性腫瘍を有する 40 例(年齢中央値 26 歳)(前庭神経鞘腫 10 例,非前庭神経鞘腫 8 例,髄膜腫 20 例,上衣腫 2 例)がブリグチニブの投与を受けた.追跡期間中央値 10.4 ヵ月の時点で,放射線学的奏効が認められた腫瘍の割合は,標的腫瘍で 10%(95%信頼区間 [CI] 3~24),すべての腫瘍で 23%(95% CI 16~30)であり,髄膜腫と非前庭神経鞘腫に対する効果がとくに大きかった.年間増大率は,すべての種類の腫瘍で投与中に低下した.聴覚改善は,適格であった耳の 35%(95% CI 20~53)に認められた.探索的に評価した疼痛の重症度は,0(痛みなし)~3(重度の痛み)の尺度を用いた自己評価で,投与中に低下したことが示唆された(-0.013 単位/月,95% CI -0.002~-0.029).グレード 4 または 5 の治療関連有害事象は報告されなかった.
複数の前治療歴がある NF2-SWN の患者において,ブリグチニブの投与により,複数種類の腫瘍で放射線学的奏効が認められ,臨床上の利益が得られた.(小児腫瘍財団ほかから研究助成を受けた.INTUITT-NF2 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04374305)