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February 1, 2024 Vol. 390 No. 5

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四肢骨折の外科的整復前の皮膚消毒
Skin Antisepsis before Surgical Fixation of Extremity Fractures

The PREP-IT Investigators

背景

手術部位感染を検討する試験では,骨折肢(すなわち四肢骨折)を整復する手術前の皮膚消毒に,ヨウ素ポバクリレックス(iodine povacrylex)含有アルコール溶液を用いた場合と,クロルヘキシジングルコン酸塩含有アルコール溶液を用いた場合とで,相反する結果が得られている.

方 法

米国とカナダの 25 病院で行われたクラスター無作為化クロスオーバー試験で,病院を,四肢骨折に対する外科手技の術前消毒として,0.7%ヨウ素ポバクリレックスの 74%イソプロピルアルコール溶液を用いる群(ヨウ素群)と,2%クロルヘキシジングルコン酸塩の 70%イソプロピルアルコール溶液を用いる群(クロルヘキシジン群)に,無作為に割り付けた.2 ヵ月ごとに各病院の介入を切り替えた.患者を,開放骨折集団と閉鎖骨折集団に分けて組み入れ,解析の対象とした.主要転帰は手術部位感染とし,30 日以内の表層切開創感染と,90 日以内の深部切開創感染または臓器・体腔感染を含めた.副次的転帰は,骨折治癒過程の合併症に対する予定外の再手術とした.

結 果

閉鎖骨折患者 6,785 例と開放骨折患者 1,700 例が試験に組み入れられた.閉鎖骨折集団では,手術部位感染は,ヨウ素群の 77 例(2.4%),クロルヘキシジン群の 108 例(3.3%)に発生した(オッズ比 0.74,95%信頼区間 [CI] 0.55~1.00,P=0.049).開放骨折集団では,手術部位感染は,ヨウ素群の 54 例(6.5%),クロルヘキシジン群の 60 例(7.3%)に発生した(オッズ比 0.86,95% CI 0.58~1.27,P=0.45).予定外の再手術,1 年転帰,重篤な有害事象の頻度は,2 群で同程度であった.

結 論

四肢の閉鎖骨折患者では,ヨウ素ポバクリレックスのアルコール溶液による皮膚消毒を行った場合,クロルヘキシジングルコン酸塩のアルコール溶液による消毒を行った場合よりも手術部位感染が少なかった.開放骨折患者では,2 群で同程度であった.(患者中心アウトカム研究所,カナダ健康研究所から研究助成を受けた.PREPARE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03523962)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 390 : 409 - 20. )