February 29, 2024 Vol. 390 No. 9
原発性胆汁性胆管炎に対するエラフィブラノールの有効性と安全性
Efficacy and Safety of Elafibranor in Primary Biliary Cholangitis
K.V. Kowdley and Others
原発性胆汁性胆管炎は,小葉間胆管の破壊を特徴とするまれな慢性胆汁うっ滞性肝疾患であり,胆汁うっ滞と肝線維症を引き起こす.ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)α・δの経口デュアル作動薬エラフィブラノール(elafibranor)が,原発性胆汁性胆管炎の治療薬として有益であるかは不明である.
国際共同第 3 相二重盲検プラセボ対照試験で,ウルソデオキシコール酸では十分な効果が得られなかったか,許容できない副作用が発現した原発性胆汁性胆管炎患者を,エラフィブラノール 80 mg を 1 日 1 回投与する群と,プラセボを投与する群に(2:1 の割合で)無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,52 週の時点での生化学的奏効(アルカリホスファターゼ [ALP] がベースラインから 15%以上低下し,正常値上限の 1.67 倍未満であることと,総ビリルビンが正常値であることと定義)とした.重要な副次的エンドポイントは,52 週の時点での ALP 正常化と,もっとも強い瘙痒の数値評価スケール(WI-NRS:0 [痒みなし]~10 [想像しうるもっとも強い痒み])で評価した痒みの強さの,ベースラインから 52 週目までと 24 週目までの変化量とした.
161 例が無作為化された.生化学的奏効(主要エンドポイント)は,エラフィブラノールの投与を受けた患者では 51%(108 例中 55 例),プラセボの投与を受けた患者では 4%(53 例中 2 例)が達成し,差は 47 パーセントポイント(95%信頼区間 [CI] 32~57,P<0.001)であった.52 週の時点での ALP 正常化は,エラフィブラノール群では 15%に認められたのに対し,プラセボ群では認められた患者はいなかった(差 15 パーセントポイント,95% CI 6~23,P=0.002).中等度~重度の瘙痒を有していた患者(エラフィブラノール群 44 例,プラセボ群 22 例)における,WI-NRS スコアのベースラインから 52 週目までの変化量の最小二乗平均値に,群間で有意差は認められなかった(-1.93 対 -1.15,差 -0.78,95% CI -1.99~0.42,P=0.20).エラフィブラノール群でプラセボ群よりも発現頻度が高かった有害事象は,腹痛,下痢,悪心,嘔吐などであった.
原発性胆汁性胆管炎患者に対するエラフィブラノール投与は,プラセボと比較して胆汁うっ滞に関連する生化学的指標を有意に大きく改善した.(ジェンフィット社,イプセン社から研究助成を受けた.ELATIVE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04526665)