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February 29, 2024 Vol. 390 No. 9

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大規模コミュニティサンプルにおける Covid-19 後の認知と記憶
Cognition and Memory after Covid-19 in a Large Community Sample

A. Hampshire and Others

背景

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる疾患,新型コロナウイルス感染症(Covid-19)後の認知症状はよく知られている.客観的に測定可能な認知障害が存在するのか,またそれがどの程度持続するかは不明である.

方 法

イングランドにおける研究で,成人 800,000 人に認知機能のオンライン評価を受けることを依頼した.8 つの課題の全般的認知スコアを推定した.感染後,症状が持続する(12 週間以上)参加者には客観的に測定可能な全般的認知障害があり,このような参加者,とくに最近の記憶力低下または思考・集中困難(「ブレインフォグ」)を報告した参加者では,実行機能と記憶に障害が観察されると仮定した.

結 果

オンライン認知機能評価を開始した参加者 141,583 人のうち,112,964 人が評価を完了した.多重回帰分析では,Covid-19 の症状が 4 週間未満で消失した参加者と,12 週間以上持続しその後消失した参加者では,SARS-CoV-2 に感染していなかったか感染が確定しなかった非 Covid-19 群と比較して,全般的認知機能の障害は同程度であり小さかった(それぞれ -0.23 SD [95%信頼区間 {CI} -0.33~-0.13] と -0.24 SD [95% CI -0.36~-0.12]).症状が持続し消失していなかった参加者では,非 Covid-19 群よりも障害が大きかった(-0.42 SD,95% CI -0.53~-0.31).最初のウイルスまたは B.1.1.7 変異株が優勢であった期間に SARS-CoV-2 に感染した参加者では,その後の変異株に感染した参加者よりも障害が大きく(例:B.1.1.7 変異株 対 B.1.1.529 変異株では -0.17 SD,95% CI -0.20~-0.13),入院した参加者では,入院しなかった参加者よりも障害が大きかった(例:ICU 入室 -0.35 SD,95% CI -0.49~-0.20).解析結果は傾向スコアマッチング解析の結果と同様であった.症状が持続し消失していなかった参加者では,非 Covid-19 群よりも記憶,推理,実行機能の課題における障害が大きく(-0.33~-0.20 SD),これらの課題には,記憶力低下,ブレインフォグなどの最近の症状との弱い相関が認められた.有害事象は報告されなかった.

結 論

Covid-19 症状が持続し,その後消失した参加者の客観的に測定された認知機能は,症状の持続期間がより短かった参加者と同程度であったが,短期間の症状であっても,回復後の小さな認知障害と関連していた.認知障害の長期持続と臨床上の影響は依然として不明である.(英国国立医療研究機構ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 390 : 806 - 18. )