The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

March 7, 2024 Vol. 390 No. 10

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

アテロームおよび心血管イベントにおけるマイクロ・ナノプラスチック
Microplastics and Nanoplastics in Atheromas and Cardiovascular Events

R. Marfella and Others

背景

マイクロ・ナノプラスチック(MNPs)は,心血管疾患の危険因子である可能性が前臨床研究で示されている.このリスクがヒトにも及ぶという直接的なエビデンスはない.

方 法

無症状の頸動脈疾患に対する頸動脈内膜剝離術を施行予定の患者を対象として,前向き多施設共同観察研究を行った.頸動脈プラークの摘出検体を用いて,熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法,安定同位体分析,電子顕微鏡検査により MNPs の存在を分析した.炎症性バイオマーカーは酵素免疫測定法と免疫組織化学法で評価した.主要エンドポイントは,心筋梗塞,脳卒中,全死因死亡の複合とし,プラーク中に MNPs の存在が確認された患者と,確認されなかった患者とで比較した.

結 果

304 例が登録され,257 例が平均(±SD)33.7±6.9 ヵ月間の追跡調査を完了した.150 例(58.4%)の頸動脈プラークからポリエチレンが検出され,平均質量はプラーク 1 mg あたり 21.7±24.5 μg であった.31 例(12.1%)では,測定可能な量のポリ塩化ビニルも検出され,平均質量はプラーク 1 mg あたり 5.2±2.4 μg であった.電子顕微鏡検査では,辺縁がギザギザの異物粒子がプラークのマクロファージ中に視認でき,マクロファージ外にはデブリとして散在していた.X 線分析では,これらの異物粒子の一部に塩素が含まれることが示された.アテローム内に MNPs が検出された患者は,検出されなかった患者と比較して,主要エンドポイントイベントのリスクが高かった(ハザード比 4.53,95%信頼区間 2.00~10.27,P<0.001).

結 論

この研究では,頸動脈プラーク中に MNPs が検出された患者は,検出されなかった患者と比較して,追跡期間 34 ヵ月の時点での,心筋梗塞,脳卒中,全死因死亡の複合リスクが高かった.(イタリア・国家の関心事項に関する科学調査プログラムほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05900947)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 390 : 900 - 10. )