September 5, 2024 Vol. 391 No. 9
脳梗塞に対するアルガトロバンまたはエプチフィバチドの補助静脈内投与
Adjunctive Intravenous Argatroban or Eptifibatide for Ischemic Stroke
O. Adeoye and Others
静脈内血栓溶解療法は急性期脳梗塞の標準治療である.静脈内血栓溶解療法にアルガトロバン(抗凝固薬),またはエプチフィバチド(eptifibatide)(抗血小板薬)を併用した場合の有効性と安全性は明らかでない.
米国の 57 施設で,第 3 相 3 群適応型単盲検無作為化比較試験を行った.脳梗塞発症後 3 時間以内に静脈内血栓溶解療法を受けた急性期脳梗塞患者を,血栓溶解療法開始後 75 分以内にアルガトロバンを静脈内投与する群,エプチフィバチドを静脈内投与する群,プラセボを静脈内投与する群のいずれかに割り付けた.主要有効性転帰は,効用値で重み付けした 90 日の時点での修正ランキンスケールスコア(0~10 で,数値が高いほど転帰が良好であることを示す)とし,中央判定で評価した.無作為化後 36 時間以内の症候性頭蓋内出血を主要安全性転帰とした.
計 514 例が,アルガトロバン群(59 例),エプチフィバチド群(227 例),プラセボ群(228 例)に割り付けられた.全例が静脈内血栓溶解療法を受け(70%がアルテプラーゼ投与,30%がテネクテプラーゼ [tenecteplase] 投与を受けた),225 例(44%)が血管内血栓除去術を受けた.90 日の時点で,効用値で重み付けした修正ランキンスケールスコアの平均(±SD)は,アルガトロバン群 5.2±3.7,エプチフィバチド群 6.3±3.2,プラセボ群 6.8±3.0 であった.アルガトロバンがプラセボよりも良好である事後確率は 0.002(効用値で重み付けした修正ランキンスケールスコアの事後平均の差 -1.51±0.51)であり,エプチフィバチドがプラセボよりも良好である事後確率は 0.041(事後平均の差 -0.50±0.29)であった.症候性頭蓋内出血の発生率は 3 群で同程度であった(アルガトロバン群 4%,エプチフィバチド群 3%,プラセボ群 2%).90 日の時点での死亡率は,アルガトロバン群(24%)とエプチフィバチド群(12%)が,プラセボ群(8%)よりも高かった.
脳梗塞発症後 3 時間以内に静脈内血栓溶解療法を受けた急性期脳梗塞患者において,アルガトロバンまたはエプチフィバチドの静脈内投与による補助療法は,脳梗塞後の障害を減少させず,死亡率がより高いことと関連した.(米国国立神経疾患・脳卒中研究所から研究助成を受けた.MOST 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03735979)