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April 24, 2025 Vol. 392 No. 16

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腫瘍浸潤性クローン性造血
Tumor-Infiltrating Clonal Hematopoiesis

O. Pich and Others

背景

「未確定の潜在能をもつクローン性造血(CHIP)」は加齢に伴う病態であり,癌患者では高い死亡率と関連する.腫瘍内で,変異アレル頻度の高い CHIP 変異が検出されることがあり,われわれはこの現象を「腫瘍浸潤性クローン性造血(TI-CH)」と命名した.TI-CH の頻度や,腫瘍進化に対する影響は明らかでない.

方 法

TRACERx 試験の早期非小細胞肺癌(NSCLC)患者 421 例と,MSK-IMPACT 汎癌コホートの患者 49,351 例において,CHIP と TI-CH の特徴を検討した.TI-CH と,生存および癌再発との関連を調べ,TET2 変異 CHIP が肺腫瘍の生物学的特徴に及ぼす機能的影響を評価した.

結 果

NSCLC 患者では,CHIP を有する例の 42%に TI-CH が存在した.TI-CH は,死亡または再発のリスクが高いことを独立に予測した.補正ハザード比は,CHIP を有しない場合と比較して 1.80(95%信頼区間 [CI] 1.23~2.63)であり,TI-CH が存在せず CHIP を有する場合と比較して 1.62(95% CI 1.02~2.56)であった.固形腫瘍患者では,CHIP を有する例の 26%に TI-CH が存在した.TI-CH が存在する場合の全死因死亡リスクは,TI-CH が存在せず CHIP を有する場合の 1.17 倍(95% CI 1.06~1.29)であった.TET2 変異は,TI-CH のもっとも強力な遺伝的予測因子であった.この変異をもったマウスでは,肺腫瘍細胞への単球の遊走が増強され,骨髄系細胞に富む腫瘍微小環境が強化され,腫瘍オルガノイドの増殖が促進された.

結 論

TI-CH は,NSCLC 患者では癌再発または死亡のリスクを高め,固形腫瘍患者では全死因死亡のリスクを高めた.TI-CH は,腫瘍免疫微小環境をリモデリングし,腫瘍オルガノイドの増殖を促進した.この研究の結果は,加齢に伴う血液のクローン性増殖が腫瘍進化に果たす役割を支持するものである.(王立協会ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 392 : 1594 - 608. )