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This Week at NEJM.org
NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.
March 14, 2002
Vol. 346 No. 11
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運動能力と死亡率
Exercise Capacity and Mortalityこの研究では,心血管疾患を有する男性と有さない男性合計 6,000 例以上にトレッドミル運動負荷試験を行い,6 年間追跡調査を行った.心血管疾患の臨床的根拠の有無にかかわらず,代謝当量で測定される運動能力が全死亡率の強力な予測因子であった.
低下した運動能力とより高い死亡率との強い関係を明らかにしたこの知見は,2 通りに解釈できる.1 つは低下した運動能力が単純により高い死亡リスクのマーカーになるというものである.もう 1 つは,低下した運動能力は一連の因果関係の一部であり,定期的な運動により体力を増強すれば死亡率を低下させることができるかもしれないということである. -
肥満した小児および青年の耐糖能異常
Impaired Glucose Tolerance in Obese Children and Adolescents現在米国で流行している小児肥満に伴い,小児と青年における 2 型糖尿病の有病率が増加している.この研究では,2 時間の経口ブドウ糖負荷試験で,インスリンと C -ペプチドの測定を行って,耐糖能異常を同定した.耐糖能異常は肥満小児の 25%,肥満青年の 21%に認られた;無症候性 2 型糖尿病は肥満青年の 4%に認められた.
この研究は,インスリン抵抗性が,重度の小児肥満における耐糖能異常の発現に関係した重要なリスク因子であることを示唆している. -
HIV 感染患者におけるミトコンドリア DNA とヌクレオシド毒性
Mitochondrial DNA and Nucleoside Toxicity in HIV-Infected Patientsこの研究では,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者の末梢血細胞における核内 DNA に比較したミトコンドリア DNA の変化を解析した.非感染対照群ならびに未治療 HIV 感染対照群両群と比較して,ヌクレオシドアナログによる治療中の症候性高乳酸血症はミトコンドリア DNA 相対量の顕著な減少と関連していた.経時的に検討した患者 8 例においては,ミトコンドリア DNA の相対量の減少は乳酸の増加に先行していた.
ヌクレオシドアナログは,DNA ポリメラーゼ γ を阻害することによりミトコンドリアに毒性作用を引き起すことがある.この研究で用いられている新しい検査法は,HIV 感染の治療中に出現しうる,この重要な毒性形態に対する実用的なスクリーニング法につながるかもしれない. -
Special Article:アンジオテンシン変換酵素阻害薬に対する基準価格設定
Special Article: Reference Pricing for Angiotensin-Converting-Enzyme Inhibitor基準価格設定は,処方薬の価格を抑制する可能性がある制度である.特定階層内の投薬では,医療保険が通常,基準価格まで費用を負担する.より高額な薬剤に対しては,患者が追加費用を負担する.この研究では,1997 年 1 月にカナダのブリティッシュ・コロンビア州で導入されたアンジオテンシン変換酵素阻害薬の基準価格設定の影響を検討した.患者が治療を中止したり,医療の利用や費用が増加した形跡はほとんど認められなかった.
処方薬に対する基準価格設定について考慮すべき問題点には,患者が薬効の低い薬に変更する,薬の服用を中止する,受診回数がふえる,あるいはより頻繁に入院するなどの可能性がある.この研究ではそのような懸念は立証されなかった. -
Special Article:メディケア受益者のための処方薬割引
Special Article: Prescription-Drug Discounts for Medicare Beneficiaries多くのメディケア受益者は,処方薬に対する保険をもっておらず,薬代の支払いが困難である.この調査では,1999 年カリフォルニア州で制定されたメディケア受益者のための処方薬割引プログラムに対する薬局の受け入れ状況を調べた.調査対象となった薬局 494 店舗の 75%が割引プログラムに従っていたが,はっきりと要求される前に割引を行ったのは,45%にすぎないことが判明した.
連邦政府による方策が存在しない中,メディケア受益者にとって処方薬がより手頃に購入できるよう,多くの州がイニシアチブを取っている.この調査の結果は,メディケイド制度で薬価と割引率を結び付けるプログラムによりかなりの節約が得られるが,多くのメディケア受益者は規定された割引を受けていない可能性があることを示唆している. -
Clinical Practice :バレット食道
Clinical Practice: Barrett's Esophagus55 歳の男性が,10 年以上,頻繁に胸やけを起している.内視鏡検査では,食道の末端 5 cm にわたる円柱上皮があることが明らかになった.生検標本は,炎症を伴う分化した腸上皮化生と,異形成の可能性を示した.この患者の状態は,どのように処置すればよいだろうか?
この論文では,患者に食道癌の素因を与える可能性があるバレット食道の管理法について総説している. -
Case Records of the Massachusetts General Hospital
Case Records of the Massachusetts General Hospital56 歳の女性が胸膜性の左側胸痛を有し,持続性左側胸水のため入院した.
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Clinical Implications of Basic Research:喘息のメカニズムにおける新しい要素
Clinical Implications of Basic Research: A New Element in the Mechanism of AsthmaCD4 T 細胞の一種,2 型ヘルパー T 細胞(Th2)は,アレルギー性の炎症や抗体産生を引き起す.1 型ヘルパー T 細胞(Th1)は,Th2 細胞を抑制するインターフェロン γ を産生する.Th2 細胞は,喘息において重要な役割をもつ.最近の研究では,喘息患者の気管支から得たリンパ球にはインターフェロン γ の産生に必要な転写因子である T - bet が欠如していることがわかり,実験的に不活化した T - bet 遺伝子をもつマウスでは喘息が発症した.
T-bet は,Th1 および Th2 細胞のバランスを維持する重要な因子である.喘息患者の気管支の病変部における同定可能な T-bet の欠如は,喘息治療への新規アプローチの可能性を示唆している.