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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

February 20, 2003
Vol. 348 No. 8

ORIGINAL ARTICLES

  • 急性呼吸窮迫症候群生存者の1 年後の転帰
    One-Year Outcomes in Survivors of the Acute Respiratory Distress Syndrome

    急性呼吸窮迫症候群生存者の1 年後の転帰

    呼吸器の治療が向上するにつれ,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)発症後も生存する患者がふえている.この研究では ARDS 生存者 109 例のコホートを 1 年間追跡した.患者は,集中治療室(ICU)在室期間中に体重の約 20%が減少したが,その後 1 年間で回復した.6 分間の歩行距離の中央値は 3 ヵ月後の 281 m から 12 ヵ月後には 422 m に増加したが,12 ヵ月後の値は年齢・性別を基にした予測値の 66%にすぎなかった.ICU から退室して 1 年後,患者の肺機能は実質的に正常であった.
    この研究では疾患の重症度が同等だが ARDS ではない対照群を含めなかったが,際立った知見は,肺機能障害よりむしろ全身性障害がこれらの患者の活動性を制限したことである.

  • ユーイング肉腫に対するイホスファミドとエトポシド
    Ifosfamide and Etoposide for Ewing's Sarcoma

    小児,青年,若年成人において悪性度の高い腫瘍であるユーイング肉腫は,局所切除に加えて,現在標準的な 4 種類の薬剤を併用する化学療法レジメンを行うと反応することが多い.この研究では,標準的化学療法と,イホスファミドおよびエトポシド併用のコースとを交互に行う治療により,診断の時点で非転移性疾患の患者で生存率が有意に向上するが,転移性疾患患者では改善されないことが示されている.
    ユーイング肉腫治療の進歩は,小児癌治療の新しい方法を協力して研究してきた小児腫瘍専門医の大きな功績である.ここで報告されている 6 薬剤の併用により,転移のない患者の 70%は,このかつては急速に致死的となっていた疾患が再発することなしに,少なくとも 5 年間は生存できる可能性がある.

  • 抗ウイルス療法と心血管疾患
    Antiretroviral Therapy and Cardiovascular Disease

    ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した患者は,生存の長期化に伴い,HIV 感染自体や抗レトロウイルス薬の影響によって,心血管疾患や脳血管疾患のリスクが高まるという懸念がある.復員軍人の大規模集団を対象とするこの後ろ向き研究では,この懸念を一掃している.
    抗ウイルス療法により死亡率が大幅に減少したが,心血管疾患の発生率は増加しなかった.それでもこの研究は短期間であったため,HIV 感染患者がより長く生存するにつれ,心血管疾患の長期的なリスクも増加する可能性は否定できない.

  • 嗅上皮のプリオン蛋白質
    Prion Protein in the Olfactory Epithelium

    嗅上皮のプリオン蛋白質

    詳細な剖検研究から,散発性クロイツフェルト・ヤコブ病で死亡した患者 9 例では,病原性プリオン蛋白質が嗅繊毛内および嗅覚路に沿って沈着していることが明らかになった.
    嗅粘膜の神経上皮にプリオン蛋白質が確認されたことは,嗅覚器の生検から,生存中の患者の診断情報が得られる可能性を示唆している.現在,診断には脳組織の検査が必要である.

SPECIAL ARTICLE

  • インフォームド・コンセント書式のわかりやすさの基準と実際のわかりやすさ
    Readability Standards for Informed-Consent Forms and Actual Readability

    インフォームド・コンセント書式のわかりやすさの基準と実際のわかりやすさ

    多くの倫理委員会は,8 年生が読解できるレベルでインフォームド・コンセント書式を書くよう研究者らに助言しているが,この研究では,倫理委員会が提供したサンプル書式がしばしば 10 年生以上のレベルで書かれていることが明らかになった.わかりやすさは地域の識字率とは関連していなかった.
    ほとんどのインフォームド・コンセント書式のわかりやすさのレベルは不適切に高い.インフォームド・コンセント書式は 4 年生から 6 年生のレベルで書くことができ,同じ情報を簡単な言葉で伝えることができる.

CURRENT CONCEPTS

  • 急性疾患におけるコルチコステロイド欠乏
    Corticosteroid Insufficiency in Acute Illness

    最近の研究は,敗血症性ショック患者に対するコルチコステロイド療法の利益を報告している.この概説では,急性疾患におけるコルチコステロイド反応の生理について簡単にまとめている.著者らは,急性疾患患者の低アドレナリン症を診断し,治療するための,最新の実際的なアプローチを示している.コルチコステロイド補充療法は,多くの重症疾患に役立つ可能性がある.

LEGAL ISSUES IN MEDICINE

  • 健康への権利と南アフリカ共和国のネビラピン裁判
    The Right to Health and the South African Nevirapine Case

    この論文では,母子間のヒト免疫不全ウイルス(HIV)伝播の予防にネビラピンを利用することを制限する,論議を呼んだ南アフリカ共和国政府の決定に対する,法的な異議申し立ての成功例について述べている.南アフリカ共和国の憲法裁判所は,母親から小児への HIV 伝播を予防する包括的な医療サービスを提供するよう政府に命令すると共に,南アフリカ共和国憲法で保証されている,国民のヘルスケアへの権利を支持した.