アロマターゼ遺伝子に影響を与える新規の機能獲得型突然変異に関連したエストロゲン過剰
Estrogen Excess Associated with Novel Gain-of-Function Mutations Affecting the Aromatase Gene
M. Shozu and Others
思春期前に発現する女性化乳房は,乳腺以外の組織でアロマターゼ活性が過剰になったために増加したエストロゲンに起因する可能性がある.染色体 15q21.2 にある遺伝子は,エストロゲン生合成にとって重要な酵素であるアロマターゼをコードしている.複数の生理学的組織特異的プロモーターがアロマターゼの発現を制御し,胎盤,性腺,脳,脂肪および皮膚で,同一のコード領域をもち組織特異的 5’非翻訳領域も有するメッセンジャー RNA(mRNA)を合成させる.
36 歳の男性とその 7 歳の息子,および血縁関係のない 17 歳の少年について,皮膚,脂肪,および血液サンプルを検討した.3 人は,エストロゲン濃度の上昇に起因する,思春期前に発現した重度の女性化乳房と低ゴナドトロピン性性機能低下症を有していた.
脂肪および皮膚のアロマターゼ活性と mRNA 濃度,全身のアンドロステンジオンの芳香族化は大幅に上昇していた.アロマターゼ阻害剤による治療で,血清エストロゲン濃度が低下し,ゴナドトロピンとテストステロン濃度が正常化した.父親と息子ではアロマターゼ mRNA の 5’非翻訳領域は,同じ配列(FLJ)を含み,非血縁少年では別の配列(TMOD3)を含んでいた;いずれの配列も,対照被験者には認められなかった.これらの 5’非翻訳領域は通常,FLJ,TMOD3,アロマターゼの順(テロメアからセントロメアに向って)で,染色体 15q21.2-3 上でクラスターを形成し,いたるところで発現している 2 つの遺伝子の最初のエキソンを構成している.アロマターゼ遺伝子は通常,TMOD3 や FLJ とは逆の方向に転写される.2 つの異なるヘテロ接合体の逆位により,患者では TMOD3 または FLJ プロモーターの方向が逆転していた.
染色体 15q21.2-3 におけるヘテロ接合体の逆位により,アロマターゼ遺伝子のコード領域が,本質的に活性があり通常は他の遺伝子を転写する潜在的なプロモーターの隣に位置することになった.その結果,多くの組織でアロマターゼの過剰発現による著しいエストロゲン過剰が起った.