1 型糖尿病における強化糖尿病治療と頸動脈内膜中膜肥厚度
Intensive Diabetes Therapy and Carotid Intima–Media Thickness in Type 1 Diabetes Mellitus
The Diabetes Control and Complications Trial/Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications Research Group
心血管疾患は 1 型糖尿病における重度の病態や死亡の原因となるが,具体的な危険因子は不明で,慢性の高血糖が役割を果しているかどうかも不明である.われわれは 1 型糖尿病の集団を対象に,アテローム性動脈硬化症の指標である頸動脈内膜中膜肥厚度の進行を調査した.
糖尿病の管理と合併症に関する試験(Diabetes Control and Complications Trial; DCCT)の長期追跡調査である,糖尿病における介入と合併症の疫学調査(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications;EDIC)の一環として,1994~96 年と 1998~2000 年に 1 型糖尿病患者 1,229 例に対し,内頸動脈と総頸動脈の B モード超音波検査を行った.DCCT で従来の糖尿病治療に無作為に割付けられた被験者 611 例と,強化糖尿病治療に割付けられた被験者 618 例で内膜中膜肥厚度を評価した.
EDIC 調査の 1 年目では,糖尿病被験者の頸動脈内膜中膜肥厚度は,年齢および性別をマッチさせた非糖尿病集団と同程度であった.6 年後,内膜中膜肥厚度は,対照被験者に比べて糖尿病患者で有意に大きかった.他の危険因子で補正すると,内膜中膜肥厚度の進行の平均値は,DCCT で強化治療を受けた群で従来の治療を受けた群よりも有意に低かった(総頸動脈内膜中膜肥厚度の進行 0.032 mm 対 0.046 mm,P=0.01;総頸動脈と内頸動脈の内膜中膜肥厚度を合せた進行 -0.155 対 0.007,P=0.02).頸動脈内膜中膜肥厚度の進行には,年齢,EDIC のベースライン時の収縮期血圧,喫煙,低比重リポ蛋白コレステロールと高比重リポ蛋白コレステロールの比,尿中アルブミン排泄率,および DCCT の平均継続期間(6.5 年)中の平均糖化ヘモグロビン値が関連していた.
DCCT の強化治療は,試験終了後 6 年での内膜中膜肥厚度の進行を減少させた.