December 25, 2003 Vol. 349 No. 26
マッカードル病患者の運動耐容能に対するショ糖経口摂取の効果
The Effect of Oral Sucrose on Exercise Tolerance in Patients with McArdle's Disease
J. Vissing and R.G. Haller
筋肉のエネルギー代謝は,主に運動初期のグリコーゲン分解に依存している.マッカードル病患者では,筋肉のグリコーゲン分解が阻害される結果,運動耐容能が低下し,筋損傷がとくに運動開始後の最初の数分間に生じる可能性がある.マッカードル病患者では,運動前にショ糖を摂取することで利用可能なグルコースが増加し,それによって運動耐容能が改善するという仮説を立てた.
単盲検無作為プラセボ対照クロスオーバー試験において,マッカードル病患者 12 例が,1 晩の絶食後,人工甘味料(プラセボ)またはショ糖 75 g で甘味を付けた飲料 660 mL を摂取した.30~40 分後,患者を一定の負荷で 15 分間エアロバイクに乗せ,その間,心拍数,自覚的運動強度の程度,静脈血のグルコース濃度を観察した.
ショ糖の補充により,平均血漿グルコース濃度が 36 mg/dL(2.0 mmol/L)以上増加し,その結果,患者全例で運動耐容能が顕著に改善した.平均心拍数(±SD)は,1 分間当り最大 34±3 拍減少し(P<0.001),自覚的運動強度は,グルコースを摂取した場合に,プラセボ投与を受けた場合と比較して顕著に低下した.
この研究から,マッカードル病患者では,運動前のショ糖摂取により運動耐容能が顕著に改善する可能性が示唆される.この治療法は,マッカードル病患者で筋損傷が発生しやすい段階に効果を発揮する.また,患者の運動能力と健康感を増大させるのに加え,運動によって生じる横紋筋融解症から患者を保護する可能性がある.