September 4, 2003 Vol. 349 No. 10
腎臓以外の臓器移植後に発症する慢性腎不全
Chronic Renal Failure after Transplantation of a Nonrenal Organ
A.O. Ojo and Others
腎臓以外の臓器の移植は,さまざまな要因による慢性腎疾患を併発することが多い.われわれは,人口ベースのコホート分析を行い,腎臓以外の臓器移植レシピエントにおける慢性腎不全の発症率,その危険因子,それに関連する死亡ハザードを評価した.
移植前と移植後の臨床変数と末期腎疾患(end-stage renal disease; ESRD)患者の登録簿から得たデータを連結させ,1990~2000 年に米国で腎臓以外の臓器移植を受けた 69,321 例における慢性腎不全の累積発症率(糸球体濾過率が体表面積 1.73 m2 当り 29 mL/分以下または ESRD への進展と定義)と,慢性腎不全に関連した死亡のリスクを推定した.
中央値 36 ヵ月の追跡期間中に,11,426 例(16.5%)が慢性腎不全を発症した.これらの患者のうち 3,297 例(28.9%)は,維持透析または腎移植を必要とした.慢性腎不全の 5 年リスクは移植した臓器の種類によって異なり,心肺移植レシピエントの 6.9%から,腸移植レシピエントの 21.3%までさまざまであった.多変量解析により,慢性腎不全のリスクの増加は,年齢の上昇(10 歳上昇するごとの相対リスク 1.36,P<0.001),女性であること(女性患者と比較した場合の男性患者の相対リスク 0.74,P<0.001),移植前の C 型肝炎感染(相対リスク 1.15,P<0.001),高血圧(相対リスク 1.18,P<0.001),糖尿病(相対リスク 1.42,P<0.001),術後の急性腎不全(相対リスク 2.13,P<0.001)と関連していることが示唆された.慢性腎不全の発症は,死亡のリスクを有意に増加させた(相対リスク 4.55,P<0.001).腎移植による ESRD の治療は,透析による治療と比べて,有意に低い 5 年死亡リスクと関連していた(相対リスク 0.56,P=0.02).
腎臓以外の臓器移植後に起る慢性腎不全の 5 年リスクは,移植した臓器の種類により 7~21%に及ぶ.腎臓以外の臓器移植を受けた患者における慢性腎不全の発症は,死亡リスクが 4 倍以上増加することと関連している.