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September 4, 2003 Vol. 349 No. 10

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ペプチド YY3–36 による肥満被験者の摂食抑制
Inhibition of Food Intake in Obese Subjects by Peptide YY3–36

R.L. Batterham and Others

背景

消化管ホルモンの断片ペプチド YY3–36(PYY)を正常体重の被験者に投与すると,食欲が低下し,摂食量が減少する.PYY は脂肪細胞ホルモンのレプチンと同様に,視床下部で食欲を調節して摂食量を減少させる.しかし肥満者ではレプチンの作用に対する抵抗性が高いため,レプチンによる治療効果が大きく制限される.われわれは肥満被験者が PYY の食欲抑制効果にも抵抗性を示すかどうかを調査した.

方 法

二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験において,PYY 投与が肥満被験者 12 例と痩せた被験者 12 例の食欲と摂食量に与える効果を比較した.PYY,グレリン,レプチンおよびインスリンの血漿濃度の測定も行った.

結 果

PYY 投与 2 時間後に出されたビュッフェ式ランチにおけるカロリー摂取量は,肥満被験者では 30%(P<0.001),痩せた被験者では 31%(P<0.001)減少した.また,肥満被験者,痩せた被験者ともに,PYY 投与により 24 時間の累積カロリー摂取量が有意に減少した.PYY 投与は,食欲刺激ホルモンであるグレリンの血漿濃度を低下させた.肥満被験者のほうが絶食時および食後の内因性 PYY 濃度が有意に低かった(絶食時 PYY 濃度の平均値 [±SE]:肥満被験者群 10.2±0.7 pmol/L,痩せた被験者群 16.9±0.8 pmol/L,P<0.001).また,絶食時の PYY 濃度は体格指数と負の相関性を示した(r=-0.84,P<0.001).

結 論

肥満被験者には PYY の食欲抑制効果に対する抵抗性がないことが判明した.肥満被験者では内因性 PYY 濃度が低く,PYY 欠乏が肥満の病因となる可能性が示唆された.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2003; 349 : 941 - 8. )