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April 22, 2004 Vol. 350 No. 17

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重症急性呼吸器症候群ウイルスの空気感染を示す証拠
Evidence of Airborne Transmission of the Severe Acute Respiratory Syndrome Virus

I.T.S. Yu and Others

背景

重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスの感染様式は明らかにされていない.香港の地域社会で起った SARS の大規模集団発生における症例の時間的・空間的分布を解析し,これらのデータと,気流動態に関する研究を用いてモデル化した,ウイルス含有エアロゾル噴流の三次元的広がりとの相関を検討した.

方 法

2003 年のアモイガーデン団地における流行初期の SARS 患者 187 例の分布を,発症日と住居の場所に従って確定した.次に,ロジスティック回帰分析を用いて,場所(棟,階,部屋の向いている方向)と感染確率との関連を検討した.発端患者から発生した空気中のウイルス含有エアロゾルの広がりは,計算流体力学および多区域モデリングを用いて実施した研究などの,気流動態に関する研究を用いてモデル化した.

結 果

流行曲線から,集団発生の共通感染源が示唆された.患者 5 例を除く全例が 7 つの棟(A~G 棟)に住んでおり,発端患者およびその他の SARS 患者のうち半数を超える患者(99 例)が E 棟に住んでいた.E 棟の中高層階の居住者は,低層階の居住者よりも有意にリスクが高かった.この知見は,中層階の部屋から発生する,通気孔内での汚染された温風の上昇噴流と合致している.別の棟のリスクは,多区域モデリングを用いて予測されたウイルス濃度と適合していた.B,C,D 棟でのリスク分布は,計算流体力学を用いて予測されたウイルス含有エアロゾルの三次元的広がりとよく一致していた.

結 論

ウイルスの空気感染によって,地域社会で起きた SARS のこの大規模集団発生に説明が付くと考えられる.予防と管理に関する今後の取り組みには,SARS ウイルスの空気感染の可能性を考慮に入れなければならない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2004; 350 : 1731 - 9. )