非小細胞肺癌のゲフィチニブに対する反応性の基礎にある上皮成長因子受容体の活性化変異
Activating Mutations in the Epidermal Growth Factor Receptor Underlying Responsiveness of Non–Small-Cell Lung Cancer to Gefitinib
T.J. Lynch and Others
非小細胞肺癌患者の大半は,上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とするチロシンキナーゼ阻害薬ゲフィチニブに対し,反応性を示さない.しかし約 10%の患者は,迅速で,多くの場合劇的な臨床反応を示す.ゲフィチニブに対する感受性の基礎にある分子機構は明らかにされていない.
非小細胞肺癌患者で,ゲフィチニブに反応性を示す患者,反応性を示さない患者,ゲフィチニブ曝露歴のない患者から,原発腫瘍を採取し EGFR 遺伝子の変異を調べた.同定した変異遺伝子が機能に及ぼす影響は,培養細胞に変異蛋白を発現させて評価した.
ゲフィチニブに反応性を示す肺癌患者 9 例中の 8 例で,EGFR 遺伝子のチロシンキナーゼ領域に体細胞変異が同定されたのに対し,反応性を示さない患者 7 例では同定されなかった(P<0.001).変異は,小さなフレーム内欠失(in-frame deletions)またはアミノ酸置換で,チロシンキナーゼ領域の ATP 結合領域周辺に集中していた.ゲフィチニブ曝露歴のない非小細胞肺癌患者 25 例中 2 例(8%)から採取した腫瘍でも,同様の変異が検出された.変異はすべてヘテロ接合性で,多数の患者で同一の変異が観察されたことから,新たに特異的な機能が付加されたことが示唆される.In vitro では,EGFR 変異体において,上皮成長因子に反応してチロシンキナーゼ活性が上昇し,ゲフィチニブによる阻害に対する感受性が増大した.
非小細胞肺癌患者のサブグループは EGFR 遺伝子の特異的な変異を有し,そうした変異は,チロシンキナーゼ阻害薬ゲフィチニブに対する臨床的な反応性に相関する.これらの変異により成長因子のシグナリングが増大し,ゲフィチニブへの感受性が獲得される.肺癌でこのような変異をスクリーニングすることにより,ゲフィチニブに対して反応性を示す患者を同定できる可能性がある.
(本論文は 2004 年 4 月 29 日 www.nejm.org に発表された.)