September 9, 2004 Vol. 351 No. 11
10~18 歳時の肺の発達に大気汚染が及ぼす影響
The Effect of Air Pollution on Lung Development from 10 to 18 Years of Age
W.J. Gauderman and Others
大気汚染への曝露が,10~18 歳時の肺の急速な発達期間における肺機能の成長に,有害な影響を及ぼすかどうかは明らかではない.
この前向き研究では,カリフォルニア南部の 12 の地域の学校から 1,759 人の小児(平均年齢 10 歳)を登録し,年 1 回の肺機能の測定を 8 年間行った.試験からの脱落率は,1 年当り約 10%であった.これらの地域では,オゾン,酸性蒸気,二酸化窒素,粒子状物質に対する広範な環境曝露がみられた.線形回帰分析を用いて,大気汚染と 1 秒量(FEV1)やその他の呼吸機能検査所見との関連性を検討した.
8 年の期間中,FEV1 の発達不良は,可能性のある種々の交絡因子や作用修飾因子で補正後も,二酸化窒素(P=0.005),酸蒸気(P=0.004),空気力学的直径が 2.5 μm 未満の粒子状物質(PM2.5)(P=0.04),元素状炭素(P=0.007)への曝露と関連していた.その他の呼吸機能検査所見についても関連性が認められた.汚染物質への曝露は,18 歳の時点で到達した FEV1 の臨床的に重要で統計学的に有意な不良と関連していた.たとえば,FEV1 が低値(FEV1 の実測値が予測値の 80%未満と定義)である 18 歳の被験者の割合の推定値は,PM2.5 曝露レベルのもっとも高い地域で,曝露レベルのもっとも低い地域より 4.9 倍高かった(7.9% 対 1.6%,P=0.002).
この研究結果は,現在の大気汚染レベルは,10~18 歳の小児における肺の発達に慢性的で有害な影響を及ぼし,小児が成人に達するときに到達する FEV1 に,臨床的に重要な不良をもたらすことを示している.