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September 9, 2004 Vol. 351 No. 11

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小児の血栓症における転帰不良の予測因子としての血漿第 VIII 因子と D-ダイマーの高値
Elevated Plasma Factor VIII and D-Dimer Levels as Predictors of Poor Outcomes of Thrombosis in Children

N.A. Goldenberg, R. Knapp-Clevenger, and M.J. Manco-Johnson

背景

成人の静脈血栓塞栓症では,血漿第 VIII 因子および D-ダイマーの高値からその再発が予測される.診断時の第 VIII 因子,D-ダイマー,またはその両方の値の上昇と,3~6 ヵ月間の抗凝固療法後も持続する検査値の異常とが,小児の血栓症における転帰不良と相関するかどうかを明らかにするために調査を行った.

方 法

X 線検査で急性血栓イベントの確認された小児 144 例において,診断時に第 VIII 因子と D-ダイマーの値の評価に加え,血栓性素因(すなわち凝固亢進)に関する広範な臨床検査値を評価した.現在の標準的治療法に従い,患児全員に最初にヘパリンを投与し,次にワルファリンまたは低分子量ヘパリンを 3~6 ヵ月以上投与した.診断から 3,6,12 ヵ月後の追跡受診時と,その後 1 年ごとに患児を検査し,前回の第 VIII 因子および D-ダイマー検査結果が異常であった小児に再検査を行い,血栓後症候群について統一評価を実施した.

結 果

診断時の臨床検査結果および追跡期間中の血栓症の転帰に関して,完全なデータを入手できた小児 82 例のうち,67%で診断時に第 VIII 因子の値がカットオフ値 150 IU/dL を上回るか,D-ダイマー値が 500 ng/mL を超えるか,あるいはその両方を示した.また,3~6 ヵ月間の抗凝固療法後に検査を受けた 75 例のうち,43%でこの 2 つの臨床検査値の少なくとも一方に持続的な上昇がみられた.82 例のうち,51%は中央値 12 ヵ月(範囲 3 ヵ月~5 年)の追跡期間中の転帰が不良であった(すなわち,不十分な血栓消退,血栓症再発,血栓後症候群のいずれかが認められた).診断時の第 VIII 因子,D-ダイマー,または両方の値が高いこと(オッズ比 6.1;P=0.008)と,3~6 ヵ月後に臨床検査値の異常が 1 項目以上で続いていること(オッズ比 4.7;P=0.002)は,転帰不良の強い予測因子であった.転帰不良に関する特異度は,診断時に第 VIII 因子の値が 150 IU/dL を上回り,かつ D-ダイマー値が 500 ng/mL を超えた場合は 91%,3~6 ヵ月間標準的な抗凝固療法を行ったあとにも両方の値がみられた場合は 88%であった.

結 論

血栓症の小児において,診断時に血漿第 VIII 因子,D-ダイマー,または両方の値が高く,また標準期間抗凝固療法を行ったあとにもこれらの項目の 1 つ以上で高値が持続する場合,予後不良が予測される.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2004; 351 : 1081 - 8. )