September 23, 2004 Vol. 351 No. 13
腎機能障害と心筋梗塞後の心血管系の転帰との関連
Relation between Renal Dysfunction and Cardiovascular Outcomes after Myocardial Infarction
N.S. Anavekar and Others
併存疾患の存在は,急性心筋梗塞では転帰に重大な影響を及ぼす.腎不全は,もっとも高いリスクと関連しているが,より軽度の腎障害が及ぼす影響についてはあまり明らかにされていない.
VALIANT 試験(Valsartan in Acute Myocardial Infarction Trial)の一環として,心不全,左室機能不全,あるいはその両方の臨床徴候または X 線所見を示す急性心筋梗塞患者で,血清クレアチニン値が測定されている 14,527 例を同定した.患者を,カプトプリル投与,バルサルタン投与,または両剤の併用投与に無作為に割付けた.糸球体濾過率(GFR)は,4 項目を組み入れた MDRD(Modification of Diet in Renal Disease)式を用いて推定し,その推定 GFR に従って患者のグループ分けを行った.4 つの GFR 群間で,70 の候補変数を含むモデルを用いて,全死亡率と複合心血管イベントの補正および比較を行った.
推定 GFR の分布は幅広く,正規分布をしており,平均(±SD)値は体表面積 1.73 m2 当り 70±21 mL/分であった.危険因子の併存,心血管疾患の既往,および Killip 分類 II 以上の急性心筋梗塞の有病率は,推定 GFR の低い(45.0 mL/分/1.73 m2 未満)患者で最大であり,この群では,アスピリン,β 遮断薬,スタチンの投与や,冠動脈血行再建術の実施がもっとも少なかった.死亡のリスク,または心血管系の原因による死亡,再梗塞,うっ血性心不全,脳卒中,心停止後の蘇生を合せた複合エンドポイントのリスクは,推定 GFR の低下に伴い上昇した.腎イベントの発生率は,推定 GFR の低下に伴い上昇したが,有害転帰は主に心血管系のものであった.81.0 mL/分/1.73 m2 以下では,推定 GFR の 10 単位ごとの低下に伴う,死亡および非致死性の心血管系の転帰に対するハザード比は 1.10(95%信頼区間 1.08~1.12)で,割付けられた治療法との関連はみられなかった.
推定 GFR で評価される軽度の腎疾患も,心筋梗塞後の心血管系合併症に対する大きな危険因子と考えるべきである.