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September 30, 2004 Vol. 351 No. 14

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好中球減少を呈し発熱の持続する患者に対する経験的抗真菌薬治療におけるカスポファンギンとリポソーム封入アムホテリシン B の比較
Caspofungin versus Liposomal Amphotericin B for Empirical Antifungal Therapy in Patients with Persistent Fever and Neutropenia

T.J. Walsh and Others

背景

好中球減少を呈し発熱の持続する患者は,侵襲性真菌感染の予防と早期治療を目的として,アムホテリシン B またはリポソーム封入アムホテリシン B による経験的治療を受けることが多い.カスポファンギン(caspofungin)は,新しいエキノカンジン系(echinocandin)化合物の一種で,アムホテリシン B よりも忍容性に優れた,効果的な代替薬である可能性がある.

方 法

この無作為二重盲検多国間試験では,経験的抗真菌薬治療としてのカスポファンギンの有効性と安全性を,リポソーム封入アムホテリシン B と比較して評価した.試験登録時に,リスクおよび過去に抗真菌薬の予防的投与を行ったかどうかで患者を層別化した.治療成功を示す転帰は,5 つの要素から成る複合エンドポイントのすべてを満たしていることと定義した.

結 果

1,095 例(カスポファンギン 556 例,リポソーム封入アムホテリシン B 539 例)で有効性を評価した.患者の層で補正後,全体の成功率はカスポファンギンで 33.9%,リポソーム封入アムホテリシン B で 33.7%(差に対する 95.2%信頼区間 -5.6~6.0%)で,カスポファンギンの非劣性の統計的基準を満たしていた.ベースライン時に真菌感染を起していた患者のうち,カスポファンギンで治療を受けた患者では,リポソーム封入アムホテリシン B で治療を受けた患者よりも,高い割合で良好な転帰が得られた(51.9% 対 25.9%,P=0.04).治療後少なくとも 7 日間生存した患者の割合は,カスポファンギン群のほうが高かった(92.6% 対 89.2%,P=0.05).試験の早期中止例は,カスポファンギン群のほうがリポソーム封入アムホテリシン B 群よりも少なかった(10.3% 対 14.5%,P=0.03).好中球減少を起しているあいだの真菌感染の発生率と解熱率は,2 群で同程度であった.カスポファンギン投与を受けた患者では,リポソーム封入アムホテリシン B 投与を受けた患者に比べ,腎毒性作用(2.6% 対 11.5%,P<0.001),点滴に関連したイベント(35.1% 対 51.6%,P<0.001),薬物関連の有害事象を示した例が少なく,薬物関連の有害事象による治療中止例も少なかった.

結 論

カスポファンギンは,好中球減少を呈し発熱の持続する患者に対して経験的抗真菌薬治療として投与した場合,リポソーム封入アムホテリシン B と同程度に有効で,リポソーム封入アムホテリシン B よりも概して忍容性に優れている.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2004; 351 : 1391 - 402. )