軽度認知機能障害の治療のためのビタミン E とドネペジル
Vitamin E and Donepezil for the Treatment of Mild Cognitive Impairment
R.C. Petersen and Others
軽度認知機能障害は,正常加齢に伴う認知機能の変化から早期アルツハイマー病に移行するあいだの状態である.
二重盲検試験を行い,健忘型軽度認知機能障害の被験者を評価した.被験者を 1 日 2,000 IU のビタミン E,1 日 10 mg のドネペジル,またはプラセボのいずれかを 3 年間投与する群に無作為に割付けた.主要転帰は,臨床的にアルツハイマー病の可能性があるか可能性が疑われる状態とし,副次的転帰は認知および機能とした.
計 769 例を登録し,うち 212 例がアルツハイマー病の可能性があるか可能性が疑われる状態になった.軽度認知機能障害からアルツハイマー病へ進行する割合は,全体で年 16%であった.3 年の治療期間中にアルツハイマー病に進行する確率は,プラセボ群と比較して,ビタミン E 群(ハザード比 1.02,95%信頼区間 0.74~1.41,P=0.91)およびドネペジル群(ハザード比 0.80,95%信頼区間 0.57~1.13,P=0.42)に有意差はみられなかった.6 ヵ月ごとの治療効果に関して事前に規定した解析では,試験開始から 12 ヵ月間にアルツハイマー病へ進行する可能性は,プラセボ群と比較してドネペジル群で低下し(P=0.04),この知見は副次的転帰指標によって支持された.アポリポ蛋白 Eε4 対立遺伝子を 1 つ以上有するキャリアでは,ドネペジルの効果は 3 年の追跡期間を通して顕著であった.アルツハイマー病へ進行する割合は,ビタミン E 群とプラセボ群のあいだでは試験期間中のいかなる時点でも有意差はみられず,すべての患者のあいだ,あるいはアポリポ蛋白 Eε4 キャリアのあいだにも有意差はみられなかった.
軽度認知機能障害の患者において,ビタミン E は効果がなかった.ドネペジル療法では,治療開始から 12 ヵ月間にアルツハイマー病へ進行する割合が低かったが,3 年後の進行率については,ドネペジル群でプラセボ群よりも低いということはなかった.
(本論文は,2005 年 4 月 13 日 www.nejm.org で発表された.)