石灰化大動脈弁狭窄症に対する積極的脂質低下療法の無作為試験
A Randomized Trial of Intensive Lipid-Lowering Therapy in Calcific Aortic Stenosis
S.J. Cowell and Others
石灰化大動脈弁狭窄症には,高コレステロール血症など,アテローム性動脈硬化症と共通した特徴が多くみられる.われわれは,積極的脂質低下療法により,石灰化大動脈弁狭窄症の進行が止ったり消退したりするのではないかという仮説を立てた.
二重盲検プラセボ対照試験を行い,石灰化大動脈弁狭窄症の患者を,アトルバスタチン 80 mg/日またはマッチさせたプラセボのいずれかを投与する群に無作為に割付けた.大動脈弁狭窄はドップラー心エコー検査により,石灰化はヘリカル CT スキャンにより評価した.主要エンドポイントは,大動脈弁のジェット血流速度の変化と,大動脈弁石灰化スコアとした.
77 例をアトルバスタチン群に,78 例をプラセボ群に割付け,中央値で 25 ヵ月(範囲 7~36 ヵ月)追跡した.血清低比重リポ蛋白コレステロール値は,プラセボ群では 130±30 mg/dL で変化がなかったが,アトルバスタチン群では 63±23 mg/dL に低下した(P<0.001).大動脈弁のジェット血流速度は,アトルバスタチン群で 0.199±0.210 m/秒/年,プラセボ群で 0.203±0.208 m/秒/年上昇した(P=0.95,補正後の差の平均 0.002,95%信頼区間 -0.066~0.070 m/秒/年).弁石灰化は,アトルバスタチン群で 22.3±21.0%/年,プラセボ群で 21.7±19.8%/年進行した(P=0.93,治療後の大動脈弁石灰化スコアの比 0.998,95%信頼区間 0.947~1.050).
積極的脂質低下療法により,石灰化大動脈弁狭窄症の進行が止ったり消退したりすることはない.この結果は,疾患進行速度のわずかな低下や,主要な臨床エンドポイントの有意な低下を完全に否定するものではない.石灰化大動脈弁狭窄症の患者におけるスタチン療法の役割を確立するには,長期にわたる大規模無作為対照試験を行う必要がある.